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根岸 郁男
根岸 郁男
novelistID. 64631
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徳冶朗と亜理須

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山村「あ、そうそう。雄一朗君は自分の車で来て車で帰りました。彼はお酒飲めないんですわ」
   遠山、黙って聞いている。
山村「そのタクシー会社の名前、判ります?」
   皹野、ジロリと睨む。
山村「さぁ、わかりませんな。居酒屋さんに頼んでもろたさかいに」
遠山「居酒屋さんの名前判ります?」
山村「もちろん」
遠山「じゃ名前教えてください。そして皹野さん、今日は車で出勤されてますか」
皹野「ええ。でも、居酒屋には車で行ってないですよ」
遠山「いや、違うんです。その、つまり…確認です。確認の為、車の写真撮ってもいいですか。鑑識の者も一緒に来てるんで」
皹野「いいですけど…」

○ タクシー会社
   パトカーが止まっている。
   遠山とタクシーの運転手が立ち話をしている。
   タクシーの運転手「居酒屋からでて三、四分のところにあるコンビニでおりましたよ、あのお客さん。なんでも酔いを醒ましたいとか言うて」
遠山「そのあとは」
タクシーの運転手「さぁ判りませんな。私はすぐ会社に戻ったので。すぐ降りるんだったらタクシー頼まなきゃ、って思いましたよ」
遠山「なんと言う名前のコンビニですか」

○ コンビニ
   レジで係員と話をしている遠山。
レジ係「あの夜のことは良く覚えていますよ。雨が降っていて、お客さんも殆ど来ない日だったので、お客さんが来ないかなと外ばかり気にしていた日です。そしたら端っこの方に止まっている車がありましてな。車種までは判りませんが黒っぽい乗用車でしたよ。私が気がついてから二、三時間したかな。タクシーが止まり、お客さんが降りて来、店内で熱い缶コーヒー一本買ってでていきました。端っこの車に乗り帰っていかれましたわ」
遠山「(胸ポケットから写真を取り出し)この人でしたか」
   遠山、皹野の写真を見せる。
レジ係「(首を捻り)さぁ、似てるけど、はっきりとは」
遠山「お店に防犯カメラありますよね」
レジ係「あります。写っているかも」
   控え室で防犯カメラの操作するレジ係。
   入ってくる皹野の映像。
   一時停止をする。
遠山「皹野やな」

○朋坂奈津実のアパート 夜
   皹野が缶ビール飲んでTV見ている
   奈津実、ソファに座り育児の本を読んでいる
皹野「奈津実、今日、警察きたで」
奈津実「そのうち掴まるで」
皹野「お前も共犯や」
奈津実「私は何もしてへん」
皹野「磐田の子供を妊娠してるとか婚約者だとか嘘いうたやろ」
奈津実「私は悪くない。すべて亨が仕組んだことや」
皹野「俺が捕まったら犯罪者の子供を生むことになるな」
奈津実「まだ籍は入れとらんから犯罪者の子じゃない」
皹野「すべてはお前の為にやったことや。お前を殺して俺も死ぬという方法もあるな」
奈津実「やめとき」
皹野「生命保険の金はどうなってんねん」
奈津実「あした電話してみるわ」
皹野「明日じゃ遅い。今すぐしろ」
奈津実「偉そうに命令すんな、あほ」
皹野「金はもう入っている頃や。確認したら明日の早朝に銀行へ行って送金してもらえや」
   奈津美、返事をせず、電話を掛けている。呼び出し音が鳴り続けている。
   
○ 徳冶朗の家(夜)
   電話が鳴っている。
   徳冶朗、壁にかかっている時計をみる。
   夜十一時を過ぎている壁時計を見てから受話器をとる徳冶朗。
徳冶朗「はいはーい。磐田です」
   TVは音量を低くしてつけている。
   ソファに背中を預け、目を閉じている登紀子。

○ 奈津実のアパート 部屋 (夜)
奈津実「夜分遅くすみません。もうお休み中でしたらご迷惑おかけします。先日は大変失礼いたしました。気が動転してまして、おもわぬことまで口走ってしまい、気分を害されたこと本当にお詫びいたします。」

○ 徳冶朗の家 居間(夜)
徳冶朗「いやいや、奈津実さんは悪くないんだ。弟の五十八が身重の奈津実さんを言葉で傷つけてしまったこちらの方こそ、謝らんといかんと思ってましたわ」

○ 奈津実のアパート 部屋
奈津実「あの、お義父さん、またお金の話なんですけど、生命保険金は入りましたでしょうか。もし入っていたらまたお金の催促になりますが、至急に送金して欲しいんです。私も今は働いていないので病院代金も払えなくて…。この先、出産費用、養育費用も必要になってきますし」

○ 徳冶朗の家 居間
徳冶朗「安心してください奈津実さん。お金は入金されましたよ。いつ送金したらよろしいか」

○ 奈津実のアパート 部屋
奈津実「入ったんですか。よかった。じゃ明日の朝でも送金して貰えます?助かります。じゃ、明朝、お待ちしてます」
皹野「おまえは役者やのぉ」
奈津実「うるさい」

○ 徳冶朗の家 居間
   受話器を置く徳冶朗に
登紀子「亜理須さんに確認しなくていいんですか。」
徳冶朗「寝た振りして聞いていたのか」
登紀子「あれだけ大きい声で話されたら聞きたくなくても聞こえますよ」
徳冶朗「(空間を睨み)明日は明日の風が吹く」
登紀子「向かい風にならなきゃいいけど、私は先に寝させてもらいますよ」

○池田市警察署 捜査課 (深夜)
   遠山、鑑識係と話ししている
遠山「そうすると、車からは修理した痕跡は見られんかったことやな。衝突したのやないからな。後は車のナンバーだな。もう一度、撮影したナンバープレートとドライブレコーダーに微かに写っているナンバープレートを確認してくれへんか」
   鑑識課係員、頷く。
   遠山、空間を睨む。
遠山、思い出したようにスマホを取り出し番号を打ち込む

○ 池田市民病院  病室の通路(深夜)
   通路にある椅子に座っている亜理須。首を下げ転寝している。
   突然スマホが鳴り、亜理須、通話ボタンを押す
亜理須「はい森野です。はい、お世話様です」

○ 池田市警察署 捜査課 (深夜)
遠山「車からは修理した跡、血痕、事件につながる証拠は見つからんかった。今、皹野のナンバープレートの確認しとる。ドライブレーダーに写っている後部のナンバープレートを一駒づつ確認しとる、長い夜になりそうだ。ですけどね森野さん、皹野のアリバイは崩れましたで。あいつ、居酒屋でみんなと飲んでタクシーで帰ったと言うてたが、途中で降りて自分の車に乗る変えて磐田さんの車の後を追いかけたんやな。ナンバープレートの確認が取れんでも明日、否もうすぐ今日やな、逮捕状請求してみますわ。でも何故皹野は磐田さんを殺さねばならなかったのかな。理由は」

○ 池田市民病院  病室の通路 (深夜)
亜理須「(立ち上がり)理由はあるんです。」

○ 某 銀行 (朝九時)
   徳冶朗が窓口へ記入した送金用の用紙を出す。五千万円と記入されている。
   受け取った窓口の女性、金額をみて
窓口の女性「磐田さん、振込み先の朋坂 奈津実様とはどういうご関係ですか。もしよろしかったらお聞かせください。まさか、振り込め詐欺じゃないですよね。それにこの金額、当店では一日の限度額を超えてますので送金できませんよ」
磐田「え、まさか。送金先の相手はうちの息子の嫁になる方なんですがね。じゃいくらだったら送金できるのかね」
作品名:徳冶朗と亜理須 作家名:根岸 郁男