オヤジ達の白球 51話~55話
「そうよねぇ。
勤め人なら日曜は休みでも、農家は収穫で大忙しなのよねぇ。
育ち盛りの野菜に、土曜も日曜も関係ないもの。
まして1人で仕事していたのでは、とても大会に参加する時間の
余裕なんて、ないわよねぇ」
「じつはそんな事情もあって、これまでソフトボールに
2の足を踏んでいたんです。
しかし。今回は大先輩からの提案なので、断ることも出来ず少々、
頭が痛いです」
「なぁに、そのことなら心配いらねぇ。ちやんと対策を考えてある。
試合のある日はチームのメンバーを集め、朝早くからキュウリを収穫させる。
試合したあと、箱詰め作業を手伝えば仕事もはやく終わる。
おれが声をかければ、10人や15人は集まるさ。
そうすりゃお前さんもみんなと一緒に、勝利の美酒を呑むことができる。
どうだ。わるい話じゃないだろう?」
「実にありがたい提案です。
しかし、それじゃチームの皆さんに、迷惑をかけてしまうことになります」
「遠慮することはない。これから同じ釜のメシを喰うんだ。
メンバーはソフトボールのために、日曜日のまるまる1日を確保してある。
すこしくらい朝早く集めても、バチは当たらないさ。
朝の5時に集合させる。
みんなで手分けしてハウスへ入れば、2時間くらいで収穫できるだろう。
ただし。ちゃんと指導しないと大変なことになる。
なにしろ全員がど素人だ。
規格にあったキュウリを収穫させるため、ちゃんと教えないと
あとでおまえさんが酷い目にあう。
ま・・・農家指導員だったおれさまも手伝うから、なんとかなるだろうがな」
「そういうことなら、俺もよろこんで手伝いにくる」と祐介が言えば、
「あたしも!」と陽子がにこりと笑う。
(54)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 51話~55話 作家名:落合順平