オヤジ達の白球 46話~50話
バッティングでもっとも大切なことは、
できるかぎりボールをひきつけること。
ひきつければひきつけるほど、ボールの軌道がはっきり見える。
好打を打つために打者がすることはふたつ。
ストライクにたいして、ためらわずフルスイングすること。
球から目を離さず、的確にバットの芯でとらえぬくこと。
(焦るなよ。
遠くへ飛ばすためには、速いバットスイングが必要だ。力んだら駄目だ。
身体の回転を使い、スイングスピードを極限まであげることだ)
柊のバットがストライクゾーンへやって来た球をとらえる。
(手ごたえは充分!)ここぞとばかり右手を返す。さらにバットを
するどく押し込む。
見事に弾き返された打球が、投手の頭上をはるかに越えていく。
そのまま2塁ベースの真上を通過する。いきおいを増した打球が上空へ
向かって伸びていく。
白い打球が、暗い夜空の中へ吸い込まれていく。
「消えていったぞ打球が・・・照明の上限を越えたんだ!」
照明塔の高さは20m。搭の上には暗い夜空がひろがっている。
柊の打球は、ナイター照明の上限をはるかに超えた。
数秒後。外野手が、闇の中から下降してくる打球を見つけだす。
打球を見つめたまま、2歩、3歩うしろへ下がっていく。
しかし途中で足がとまる。
外野手のはるか頭上を、打球がゆうゆうとした放物線をえがいていく。
外野へ落ちてくる球ではない。
作品名:オヤジ達の白球 46話~50話 作家名:落合順平