短編集52(過去作品)
今回の旅は最初から作家になることを目指してだったのかも知れない。画家になってしまったのもそのステップなのかも知れない。
完璧をいつも目指していた。だが、一歩下がることで、自分が目指すものが見えてきたりする。心の余裕が甘く切ない夢を見せたりする。それがコンセプトにつながり、旅行に出かけて見つけたものが表現へと変わってくる。
女を抱いた夢、シチュエーションは海の干満。好きな人と一緒になるために旅行に出かけて自殺を図った男女。自殺などという意識はまったくなかった二人。旅立ちだけを胸に果てのない旅を描いている。
だが、青山は結局、その場所から離れることはできない。あくまでも完璧を目指し、完璧に近づくことを人生のコンセプトにしている。最後が何であっても、自分の世界から逸脱はできないのだ。それは夢の世界も同じで、表現だけが自分の世界を広げることができる。そこに気持ちの余裕が育まれる環境ができるのだ。
青山は今、自分の中に女性の考えが芽生えているのを感じていた。表現が広がってきたのである。完璧を乗り越えた先には、自分の夢で見たものをも克服できるようになっているのかも知れない……。
( 完 )
作品名:短編集52(過去作品) 作家名:森本晃次