すきま 探偵奇談18
たたん、たたん、たたん、と規則正しい揺れと音。瞼の裏が明るい。
「ん…」
眠っていたようだ。何だか、とてつもなく長い夢を見ていたような気がする。
「瑞、おまえやっと起きたのか?」
隣を見る。夕島がいる。電車が停止する。無人の駅。いや、違う。窓の外のホームには、瑞が、自分が、立ちすくんでいるのが見えた。夕日に照らされて。
「言っただろ、もう帰れないって」
ああ、まだ夢の続きなのだろうか。
それとも、繰り返しているのだろうか。
「…おかえり瑞。待ってたよ」
耳元で、嬉しそうに囁かれる。
終わらないのだ、この夕焼けは。
――それは日常の隙間に。
時折音もなく滑り込んでくる異物。
いつもの町。
いつもの友だち。
いつもの会話。
だけど本当にいつもと同じかな?
どこか違う。
何かが違う。
でも何が違うのはわからない。
違和感に気づいたときにはもう遅い。
それを逢魔が時と呼ぶんだよ。
一度迷い込んでしまったら。
抜け出すのは至難の業だ。
魔物に魅入られたらもうおしまい。
も う ず っ と こ の ま ま
END
作品名:すきま 探偵奇談18 作家名:ひなた眞白