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⑥冷酷な夕焼けに溶かされて

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風のようにいつの間にか私の隣に立っていたフィンが、ふっとやわらかな笑みを浮かべる。

「ちなみに、私室の中庭には奥があるんですが、そこには姫だけ入れてます。
僕らは、入れませんでした。」

(僕ら…『僕』と『ララ』…。)

母代わりのララが亡くなってしまって、本当は言葉に言い表せないほど悲しいはず。

(なのに、そうやって優しく微笑むの?)

先ほど見せた虚ろな様子は既になく、すっかりいつも通りだ。

13歳なのに、あまりにも大人びたその気持ちの切り替えように驚く。

そういう教育を受けてきたのだろうけれど、それがより悲しさを増した。

「ミシェル王の許しがないと入れない場所はそこだけ?」

僅かに色めき立つマル様の声に、ハッと我に返る。

「はい、そこだけです。
そこは忍び込むことができない造りになっていたので、我々忍でも入れませんでした。
一度、姫を連れて入られる時にお供しようとしたら、『誰も入れるな』と命じられて、暗に我々も立ち入るなと拒まれました。」

(そういえば、そういうことがあったわ!)

二人きりで過ごした幸せなひとときが、鮮明に蘇った。

(そこで、ミシェル様は私の膝枕で眠られて…。)

その後の夕食でミシェル様のことを好きだと自覚したことまで一気に思い出した私は、顔がカッと熱くなる。

「私室の裏庭に奥があるの、知ってた?」

マル様がカナタ王子に訊ねると、カナタ王子がふるりと首をふった。

(たしかに、あそこは一見そんなに奥行きがあるように見えないから、カナタ王子でも気づかなかったかも。)

「…案内しな。」

言いながらフィンを見たマル様の瞳が、ギラリと光る。

まるでミシェル様がそこにいると確信した様子に、私の胸も期待に満ち自然と鼓動が高鳴った。

「このまま行ける?」

マル様の言葉に、フィンが頷く。

「処刑場から入りましょう。」

「でも、あそこは遮るものがない広場だから、身を隠せないんじゃ…。
警備もかなり厳重だった記憶があるわ。」

私が不安の声をあげると、マル様がカナタ王子をちらりと見た。

その視線だけで何を指示されたかわかったのか、カナタ王子は小さく頷きを返すと、サッと右手を上げる。

すると、それを合図にカナタ王子とまわりにいた忍達の姿が瞬時に見えなくなった。

「奏が道を拓きます。参りましょう。」

(道を、拓く?)

事も無げに言われた言葉の意味がわからず首を傾げた私だけれど、この十数分後にその真相と現実を知ることになる。