堕落ですね
「ご存知ですか? <天上界>に入るのに必要な条件」
1歩踏み出した<天上使>が、僕に近づく。
「業の9割が 善であると判定される事です」
「…いるんですか? そんな人」
「まあ、普通に人界を生きて、そんな条件を満たす人間は 滅多には──」
「そうでしょうねぇ」
「だからこその、補欠救済です。」
微笑む<天上使>。
「これを活用する事で、<天上界>では 人口定数を満しています」
「は、はぁ…」
「その栄誉を受ける権利を、貴方は得たのです!」
気圧された僕が後ずさりした分だけ、<天上使>は前に出る。
「<告解域>を、ご存知ですか?」
「確か、<中間界>と<天上界>の間にあるんじゃ──」
「貴方は 今からそこに赴き、善き行いをするのです」
「い、一体何を…」
「不眠不休・飲まず食わずで77年と7ヶ月、<至高の存在>を讃えて頂きます」
「─ へ?!」
「ごく 簡単な事です」
笑顔の<天上使>が、僕に迫る。
「罪を浄化され、<天上界>に迎え入れらる祝福に比べれば、些細な行だと思いませんか?」
「えーとぉ」
「<至高の存在>のお慈悲ですから、謹んで…」
「─ 出来れば 遠慮させて頂きたいんですが。」
<天上使>は顔色を変えた。
「もしや 貴方?!」
「な、何でしょう?」
「既に<地下界>に堕ちる契約を 結んでいるのですか!?」