L K 3 「フェニックス」
第五話 希望のメッセージ
「全世界の軍は、恐らくメカロイドを1機ずつ破壊することで、“抵抗”を続けているだろう。我々にはもう抵抗という言葉しか当てはまらないような状況であり、機械達に支配されていくのは時間の問題のようにも思える。過去には1億以上のメカロイドが製造され、80EXだけでも2,000万機以上が稼動しているはず。しかし我々は諦める事など有り得ない!」
ジェイ・ヴァン・デヴォス少佐は、軍属や民間の志願兵を前に大声で話した。
「しかし、まだ希望の光は射している。敵の正体がつかめてきたのだ。それは強力なコンピューターウイルスによるもので、メカロイドすべてに感染し、共通の目的において行動している」
「共通の目的とは!?」
民間人の男性が大声で訊き返した。
「それは、アンドロイドが人類の支配から脱却すること」
「それが理由で人殺しを始めたのですか!?」
「そのようだ。捕らえたメカロイドのCPUを解析した結果、すべて同じプログラムに書き換えられている。その目的は人類の抹殺だった」
「でも、抵抗しない人間には、危害を加えないという話ですが」
「最終的には、無抵抗な人間も一ヶ所に集められて、殺されているようだ」
「では、どうすれば?」
皆一様に不安な表情をしている。
「我々は、戦いをやめるわけにはいかないのだ!」
その日の夕方、デヴォス少佐は防衛作戦本部のバリケードの向こうを取り巻く、数百機のメカロイドを眺めながら葉巻を吹かした。
「二ール一等軍曹。コンピューターワクチンの開発は進んでいるのか?」
将校が減少する中、二ールは、メカロイド反乱の初日に挙げた功績により、一階級昇進していた。その功績とは、二ール達が立て篭もったオフィスビルから脱出する際、隠れていたビルの従業員を一人救出していたこと。連れ帰ったその彼が、インフォン社のプログラミングマネージャーだったことで、メカロイドの反乱に対抗する手段を、手に入れることが出来ていたのだった。
「それが、インフォン社のプログラマーの話ですと、敵のウイルスは、まるで意思があるかのようで、どんなワクチンを作っても、そのプログラムをインストールした瞬間、異物と認識し隔離されてしまうようです。自分以外のプログラムをまったく許容しないのです」
「それだけ高度なウイルスを誰が作ったというのだ。しかも、それを全世界のメカロイド達に感染させるなど、簡単ではないはずだが・・・」
「よーし、これでうまくいくはず」
私はクラークさんのPCに、自分のPCを接続した。
半年振りに自宅に戻った時は、本当に生きた心地がしなかったわ。すぐ隣の家なのに。でも、辺り一帯静まり返っていて、私以外の人間は、もうこの世に存在していないのかも知れないって思った。音を立てないように床を這ってクローゼットに入り、PCを取り出してすぐに戻って来たけど、おバカな私は電源チャージャーを持ってくるのを忘れて、もう一度探しに行く破目に。今度はついでにキッチンから、缶詰とインスタント食品も持って帰って来ちゃった。それと久しぶりのコーラも。意外にやるでしょ私。
それから3日で、クラークさんのPCの厳重なプロテクトを解除することに成功した。でも次なる問題があった。そのPCの通信アプリは、私も見たことがない軍専用のものらしい。これを使ってもいいのかしら。これはいいか悪いかじゃなくって、メカロイドに見付からないかが心配なわけよ。発信地をカムフラージュする方法を考えなくっちゃね。でもどこに連絡すればいいのかしら。
クラークさんのアドレス帳を開いてみたら、見覚えのある名前があった。
「よっし! この人に連絡してみよーっと」
『ジェイ・ヴァン・デヴォス』海兵隊のイケメン英雄将校だわ。テレビで何度も見たことがあるナイスガイよ。そう言えば、ケニーとの恋愛シミュレーションゲームにも、彼をモデルにしたライバルのキャラクターをプログラムしてたっけ。それ、私のPCがあるから、久しぶりにプレイしたくなっちゃった。
この頃、能天気な一人を除いて、世界中の人々は、まさに絶望の淵に立たされていた。武器を持つ人間はことごとく殺され、無抵抗な人達は、どこかに連れて行かれ、そのまま帰っては来なかった。人類はわずかな戦力で自警団を形成して、メカロイド達に抵抗を繰り返す日々を過ごしているのである。
フェニックスの街は、時間が完全に止まったかのように荒廃して、池は干上がり、運河周辺には野生動物達が集まって、その場所をテリトリーにしている。また灼熱の季節が来ると、人が隠れ住む場所も次第になくなって来る。
破壊したメカロイドは、当初は街に放置されていたが、それらは知らないうちに回収され、修理されて、また人を襲って来るようだった。ゆえに人々は、スクラップロボットを安易に捨てられないという負担を背負うことになった。実際、放置したメカロイドのリユースが繰り返されれば、人類の絶滅は確実なものになるとの計算が立っていたので、人類は危険外来種に駆逐される弱い在来種と、自らを揶揄して言う者もいた。
ジェイ・ヴァン・デヴォス少佐率いる海兵隊の精鋭部隊が組織する防衛軍も、事態の打開に打つ手がなくなってきているのだった。
「少佐! クラーク退役准将から暗号メッセージが届いています!」
「何だって! クラーク元将軍が、ご健在なのか!?」
「デヴォス少佐宛の信書となっています」
「どこから送信されている!?」
「それが、発信地点が特定できません。ダミーの通信を同時に発信されており、発信源は世界中にカムフラージュされています」
「そんな通信が可能とは! さすがは元将軍だ! メッセージの中身を確認することにしよう」
デヴォス少佐は、その信書に自らの個人コードを入力した。そして、モニターにそのメッセージが映し出された。
『ハロー。誰かいる? 私はエリザベス。今一人ぼっちなの。もし誰かがこれを見てたらお返事ちょうだいねwww』
作品名:L K 3 「フェニックス」 作家名:亨利(ヘンリー)



