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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K 3 「フェニックス」

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 それから約30分間、ケニーは私と一緒に歩いて、街の様子を観察しつつ、途中まで送ってくれた。そして彼は別れ際に、初めて私にキスをした。左の頬に強く。まだそんな気はないって思うのに、私はその時、ハグで応えた。社に戻る彼の後姿を見送りながら、とてつもない不安感に襲われ、一刻も早く家に着きたいと願って、走り出したい気分だわ。でもこの照り付ける太陽から隠れて、日陰で休みながら、ゆっくりと家に向かって歩いた。
 郊外の人々は落ち着いてるみたいで、家に近付くにつれ、日常と何ら変わりがないように思えてきた。公園の池でタンクに水を汲む大人達のそばで、子供達が無邪気に遊んでいる。

 夕焼けがかかる頃、私は家にたどり着いた。隣家のクラーク夫人は、庭の草に水を撒こうとしているようだけど、水道が出ないみたいね。
「おばさん。大丈夫だった?」
「リズ。まったく、どうしちゃったんだろうね。会社もお休みになっちゃたのかい?」
「ええ。もう何もできなくて。何か情報はない?」
「電気が止まっちゃってるから、何も判らないままよ」
「水も出ないんでしょ?」
「この水は井戸水だから心配ないわ。でもポンプが動かないんじゃねぇ」

 家に入ろうとしたけど、ドアのロックも開かないじゃない。私は仕方なく、窓を割って中に入った。不用心だけど、この暑さでエアコンが使えないと、どうせ窓は開けっぱだしね。
 一人だとやっぱり心細いな。寂しさからか、ケニーのことを思い出しちゃう。その晩、灯りには食用油を利用した。一人暮らしにロマンチックなキャンドルなんか必要なかったから。って言うのも寂しいけど。でも食料ならたっぷりあるの。自慢じゃないけど引き篭もり気味の私は、PCの作業に没頭して、買い物にも滅多に行かない。買い置きだけはしっかりしていたことが、役に立ったなんて。