小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

L K 3 「フェニックス」

INDEX|7ページ/25ページ|

次のページ前のページ
 

第四話 隠れ家生活



 のどが渇いた。私は自宅に戻っても大丈夫だろうか。ここに隠れ続けることも不安だけど、いつまでもこうしてはいられないし、どうしよう。その時、小屋の中の戸棚の扉から、わずかに明かりが漏れていることに気付いたわ。
(何かしら。電気は切れているはずなのに)
その扉をゆっくりと開けると、それは戸棚ではなく、地下に続く長い階段になっていた。私は光が外に漏れることを恐れて、急いで中に入って扉を閉めた。中からは引き戸のようにダミーの戸棚を扉にかぶせる構造になっている。
(隠し部屋かしら)
 私は恐る恐る階段を下りた。かなり深い地下に繋がっているわ。階段はコンクリート製で頑丈そう。地下室は照明が灯ったまま静まり返っていた。でもそこには生活感があった。
 壁にかけられたハンガーに吊るされていたのは、軍服ね。階級章には・・・
「准将?」(クラークさん元軍人だったの? しかも将軍?)
ここは核シェルターか何かね。電源は独立していて使えるみたい。発電機の音がしないから、バッテリーかしら。それじゃいつまで持つのか分からない。でも、隠れ住むには持って来いの場所、見付けちゃった。

 この部屋の隅々まで調べて分かったことは、バッテリーは、すごく高価な熱核反応電池で、20年くらいは問題なく使えそう。水は井戸水が使える。でも食料がそんなにないから、生きられたとしてもせいぜい3年。それまでにどうするか考えなくちゃ。
 クラークさんのPCが置いてある。画面表示によると、どこかと通信しようとしていたみたい。でも、ネット接続なんかしたら、私がここにいるのがばれてしまう。
 あれ? このPC、電源が入っているじゃない。そうか、ネット接続していないPCなら、トラブルの影響を受けていないってことなのか。私の家にもネットから切り離された古いPCがあるけど、クローゼットの奥に仕舞い込んでて、そんなこと忘れてた。

 1週間この地下室で過ごした。外をこっそり見ても、風の音以外、まったく何も聞こえてこない。メカロイドも近くにはいないようだ。灼熱の太陽の下、暫くはクラーク夫婦の遺体からひどい臭いが漂っていた。最近は自動散水出来ていないから、草花は枯れて、アリゾナ名物のサボテンだけ緑が残っている。遺体も乾燥してミイラみたいになってきた。かわいそうだけど、埋めてあげることもできない。
 近所の人達は、どこに連れて行かれたんだろう。あのメカロイドの様子じゃ、みんな無事とは思えないけど、まさか殺されちゃったなんてこと、ないわよね。私も付いて行くべきだったのかしら。
 おばあちゃんはどうしているだろう。無事を確認することなんて不可能だわ。連絡したいけど、電話は繋がらないし、テレビやネットニュースも見れるはずない。
 ケニーは無事だろうか。なんだか彼のことばかり考えている自分に気が付いた。特別な関係ではなかったのに、こんな感情になるなんて。最後にキスされたからかしら。彼はいつも紳士的で、私にはとてもフレンドリーだったのに、変に誘ってきたりしなかったわ。でも、私はそれを待っていたのに・・・。実は彼を相手にした恋愛シミュレーションゲームを、こっそりプログラムしたこともある。本当のこと言うと、ちょっと気になる存在だった。・・・うーん、それにしてもこのシリアル飽きちゃった。コーラが飲みたい。私は水をかけただけのシリアルを食べるのをやめた。

 1ヶ月が経過した。もうストレスの限界。何もない単調な毎日。時々、小屋の窓から外を眺めても、何も新しいことがない。廃れていく景色の一部を見てるだけ。だから、運動をすることで時間潰しをしてる。腕立て伏せが30回連続で出来るようになりそう。
 でも唯一、時を忘れて没頭できることもあった。地下室に置いてあったクラークさんのPCは、どのソフトを立ち上げても、パスワードが必要で役に立たない。だから私はその空きスペースに、パスワード解析ソフトをプログラムしてみた。
「んー、やっぱりダメか。さすがに元将軍のPCね。プロテクトが複雑で一筋縄じゃ行かないな」
でも私はプログラミングのプロ。どんなシステムでもハッキング出来る自信がある。これまで違法なことは出来なかったけど、今は腕が鳴る思いよ。

 半年が過ぎた。腕立て伏せ100回、腹筋300回、スクワット1,000回。これが毎朝のルーティーン。その後、PCの解析を夜まで続けて、かなりシステムが解ってきた。あと少しでセキュリティを突破出来そう。
「そうか、解かったわ。パスワードじゃなくって、解除キーが必要なのね」
 きっとクラークさんは、プロテクト解除用のカードか何かを使っていたはず。でも、それが手に入らないと、セキュリティプログラムは突破できないわね。諦めるしかないの?
「いいや。まだ方法がある」
 でも、それは危険だなぁ。私のPC。クローゼットに仕舞い込んでるやつ。あれならきっと起動するし、このPCに繋いで、セキュリティ解除させられると思うのよ。

 それから1週間、私は腕立て伏せ200回を目指すだけの日々を過ごした。クラークさんのPCのプロテクト突破は諦めるしかないのかな。でももう半年以上こんなことをしていて、未来はない気がしている。唯一の希望だったのは、このPCの画面が当初、何らかの通信アプリケーションが立ち上がっていたということ。それはどこかと通信出来る可能性があるような気がする。
「やっぱり、行くしかないわ」
 これは自殺行為とも思えるけど、自分の家にPCを取りに戻ることにしよう。