L K 3 「フェニックス」
「リズ。君はどうするんだ?」
ケニーは自分のビジネスリュックに非常食を詰めながら、帰り支度をしている。
「私は・・・(どうするべきか)」
「途中まで一緒に帰ろう」
「私は家に帰っても誰もいないから」
「じゃ、うちに来てもいい。僕の両親も大勢のほうが安心するだろう」
「ありがとうケニー、でもそういうわけには・・・」
私に対するケニーの好意には気付いていたけど、まだ両親に紹介されるような仲ではない。
「隣近所の皆のことも気になるから、やっぱり家に帰ることにするわ」
ケニーは非常食の袋と水を手渡して、私の肘を掴むと、素早くオフィスから連れ出した。
「モーター始動」
ケニーは自分のバイクに、音声コマンドを試してみた。でも、それはウンともスンとも言わない。イモビライザー・キーでカバーを開けて、イグニッションスイッチを押してみたけど、やはり動かなかった。交通管制サーバーと通信できてないんじゃ仕方ないわ。
「再プログラムできないかな?」
「簡単なことだけど、PCが使えないと無理よ」
エアートレインも動いていなさそう。ステーションから出てくる人もいれば、駆け込む人もいる。誰もまだ正確な情報がつかめていないってことかしら。
街中パニックになっているわ。でも暴動や略奪が起こっているわけじゃないけど、皆困惑して急ぎ早にすれ違っていく。
ケニーは帰宅するのを諦めた。彼の家は街外れの荒野の向こう。この暑さじゃバイクがないと、たどり着くのは不可能に思うから。
作品名:L K 3 「フェニックス」 作家名:亨利(ヘンリー)