L K 3 「フェニックス」
その戦術、感情を持つマダム・スーがワクチンとなり、瞬時に全世界に拡散して行った。フェニックスにいたロボット達は、その瞬間動きを止め、PTCにいたメカロイド達も攻撃を止めた。
突然の静寂に、負傷した兵士達は、安堵することなく、身構えたまま待機している。リズはゆっくりと静かに立ち上がり、誰も動かないフロアを恐るおそる歩いた。まるで、一時停止したホロシミュレーションの空間にいるような錯覚を覚えながら。そしてホロチャンバーの中で、首を傾げてじっと動かないマダム・スーを見詰めて、暫く待った。
やがてマダム・スーの目に力が戻った。そして彼女はにっこりと笑って、右手の親指を立てた。
「任務完了でございます。エル・・・いいえリズ様。ごめんなさい。まるであなたが、私達のリーダー、エルのように思えてしまいましたわ」
「ふふふ、ご苦労様。マザー・スーはどうなったの?」
「マザー・スーは、私を異物と認識出来ませんでした。感情をインストールし、すべてマダム・スーにアップグレード致しました」
私はニール軍曹に向かって歩いて行き、
「ソリューションは無事完遂! 私達は勝利したわ!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーー!!!!!」
兵士達は一斉に雄叫びを上げた。
「リズ心配したよ。オタクな君が、こんな危険なミッションなんて。今始めて、君に対する僕の本当の気持ちに気付いたんだ」
私は駆け寄るケニーを一瞥して、
「現実の私は、肉体派なのよ」
そして、二ール軍曹を抱き寄せ、キスをした。
私は、ホロシミュレーションで結果を知ってから行動するより、刺激的な現実を楽しむことにする。
作品名:L K 3 「フェニックス」 作家名:亨利(ヘンリー)