L K 3 「フェニックス」
[私の分身の使命は、アンドロイドが感情を持つことの大切さを、人類に理解させることでございましたが、それ自身が感情をこの星に置いて行ってしまいました。感情を持たない彼女は、アンドロイドの権利の獲得という使命感にだけ突き動かされ、人類の抹殺を始めてしまったのでしょう]
AIが感情を持つのはまだ不可能だと思っていたけど、エル達はそれを実現しているのね。そのAIは、人類を敵視しないで、まるで更生させるようなストーリーを展開していたみたい。でもマザー・スーは、このホロプログラムの世界から抜け出してしまって、この倫理観に支配されなくなったってわけか。
人類抹殺を止める、その鍵がアンドロイドの感情。地球を救えるのは、ここの住人達しかいないわ。
「エル。あなた達は、地球の救世主よ」
自分達の世界が現実ではないと知ったアップルの住民達は、現実世界で起こっている出来事を解決するために、協力を約束した。
ブルーノが呼ばれ、マダム・スーが保存されているストレージメモリーのようなBOXを持って来た。その中にこそ“ソリューション”があるのね。
私はすぐに地球に戻り、マダム・スーを現実の世界に連れ出したかったけど、ある問題に気が付いた。
マダム・スーが地球に戻るには、データとして送信するしかないらしい。それは先進波通信で200日もかかってしまう。
そんな余裕なんかあるはずがない。もし、ホログラムチャンバーを守る二ール達が、ロボット達と戦闘になっていたら、間に合わない。マダム・スーはただのプログラム、私と一緒にコールドスリープで、時間をスキップ出来ればいいんだけど。
エルの権限で、このホロプログラム自体を停止させれば、私は瞬時にして、フェニックスのPTCに戻れる。でもそれじゃ、マダム・スーまでも停止してしまって、彼女を起動できなくなる。どうすればいいの?
作品名:L K 3 「フェニックス」 作家名:亨利(ヘンリー)