L K 3 「フェニックス」
「じゃ、私をエルのいる所に案内してちょうだい」
『では、ケープカナベラルのスペースポートから、外宇宙旅客船に乗船してください』
「どこに行けば会えるって言うの?」
『惑星アップルです。約28年間の宇宙旅航が必要です』
「そんなの面倒よ。すぐに惑星アップルの場面を起動してちょうだい」
『操作を実行する権限がありません』
「な、何ですって?」
『編集する権限を持つのは、エルだけです』
「分かったわよ」
エルに会おうと、コンピューターにエルの居場所を問い合わせて、惑星アップルの存在を知ったものの、その星をホログラムで再現しようとしたら、私には権限がなく、途中からプログラムを開始できないって言うの。
一からプログラムをスタートするしかなかった。地球からアップルまでは、宇宙船で28年かかるらしい。エルと連絡を取るにも、先進波通信とやらで、送信だけで200日かかるんだって。返信が来るまでにさらに200日。
現実の地球に、そんな猶予はもうないわ。
散々悩んだ末、私は賭けに出た。通信のやり取りで一年以上待つより、28年かけて宇宙旅航した方が、現実には早く済むと。つまり、コールドスリープ(人工睡眠)に入ると、私は意識を失くす。その間コンピューターは、実際には時間をかけずに、28年分プログラムをスキップするはずだわ。
私は宇宙船に乗るために、この仮想現実の世界のフロリダにある、ケープカナベラル・スペースポートに急いだ。
作品名:L K 3 「フェニックス」 作家名:亨利(ヘンリー)