L K 3 「フェニックス」
第十一話 仮想現実の世界
私は一人、危険を承知で、ホログラムチャンバーに入り、問題のプログラムを起動した。
外ではケニーがモニタリングしてるけど、ついさっきまで、恋人みたいな関係だったのに、今はもうアイツのこと、大っ嫌い。でも、今はそんなこと気にしてる場合じゃないって分かってる。私達の行動が敵にばれて、このホロチャンバーを破壊でもされたら大変だ。敵の襲撃に備えて、この施設をニール達が守ってくれているけど、私は一刻も早く、“ソリューション(解決策)”を見つけ出さないと。
でも、そのホロプログラムは自由に編集することは出来なくなっていた。Administrator(アドミニストレーター)権限は私にあるはずなのに。
よく調べてみると、上位のTrustedinstaller(トラステッドインストーラー)の権限が、別途設定されているようね。その権限を持っているのは『L(エル)』。誰かしら。
「コンピューター。エルとは誰のこと?」
『エルは、このホロプログラムの主人公です』
(このコンピューター、すごく流暢に話すわね。さすが私のプログラム)
「主人公って、今はホロプログラムを体験する私が、主人公じゃないの?」
『いいえ、違います。ホロキャラクターであるエルが、主人公であり、このキャラクターによる行動が、ホロシミュレーションの筋書きとなっていきます』
(AIがエルの行動をシミュレーションしているのか、エル自身がAIの母体なのか?)
「エルに会いたいの。エルを起動して」
『エルはここにはいません』
「ここに呼び出してちょうだい」
『それは出来ません。現在エルは、ストーリーを展開中です』
(そうか、バックグラウンドで、常にストーリーを継続しているって話だったわね)
作品名:L K 3 「フェニックス」 作家名:亨利(ヘンリー)