L K 3 「フェニックス」
この発見をすぐに、二ール軍曹にだけ報告した。ケニーには相談しなかった。なぜなら彼を対象にした恋愛を、こっそり楽しんでいたなんて知られたくなかったから。当然でしょ。
「お手柄だよ、リズ。君じゃないと、このバイオロイドとの関連性に気付けなかっただろう」
「でも、それは内容を見てもらったらわかるように、私個人のPCにしか保存していなかったデータファイルなんです」
「それがどうして、利用されてしまったのか。つまりこう考えられないか? 君のPCを何者かがハッキングして、そのプログラムを盗み取った」
「そんなはずは、このPCはもう2年以上、家のクローゼットの中に放置していたんですよ」
「それ以前は? どうしていたんだ?」
「仕事に使っていました。オフィスに置いていたけど、セキュリティは万全で私のプロテクトが破られるはずがありません」
二ール軍曹は顎に手を当てて考えている。その間に私もデータファイル流出の原因を推察した。
(まさかね。そんなことあるはずない)
私はひとつの可能性を思い浮かべていた。でもニール軍曹も同じことを考えたようだった。
「ハッキングされたのではないとしたら、どうだろう?」
「オフィスの誰かが、盗み見たってことでしょうか?」
「そのPCのログインは、静脈認証か網膜認証なのか?」
「いいえ、生体DNA認証ですから・・・」
「生身の君しか扱えないわけか・・・じゃ、他に何か心当たりは?」
「ないことはない・・かな・・」
毎日一緒に働いていれば、私が席を外した時に、盗み見することなんか簡単だわ。隣で仕事している人物なら、なお更のこと。
(ああ、うかつだったわ。まだ私の秘密情報管理意識が低かった頃だわ。PCをログアウトしないで席を立つことが多かった。きっとそんな時に、データを盗まれていたんだ。私、トイレ長いから・・・)
作品名:L K 3 「フェニックス」 作家名:亨利(ヘンリー)