L K 3 「フェニックス」
第十話 信頼の崩壊
(このホロプログラムすべてを削除すれば、現実世界でのマザー・スーの暴走は止まるだろうか?)
いいえ、すでにマザー・スーは、ホロプログラムを抜け出してしまっているはず、効果はないと思う。このホロチャンバーの電源が落ちて、停止していたにもかかわらず、全世界にマザー・スーが広がっているのがその証拠。“マダム・スー”というキャラクターの一部が抜け出して、“マザー・スー”になったのかしら。
シミュレーションプログラムは、初期化せず“継続”を選択したから、ホロチャンバー内ではどんなプログラムが実行されて来たのか、調査を続ける事が出来たけど、そのことで事態は大きく変わることになった。私にとって、予想もしなかった事実が判明した。
「こ・これは・・?」
こんなこと知りたくなかった。いいえ。無視はできない。私が直視しななきゃならいない事態だわ。
そのホロプログラムファイルにあったデータ・・・それに付いて私は、ハッキリと見覚えがある。私のシミュレーションゲームに出てくる、架空のアンドロイド“SS3000シリーズ”のものとあまりにも似ている。
(これは、私が作ったプログラム。でもどうしてそのプログラムが世に出ているの? あれは個人的に楽しむために作った、ただのゲームだったはずなのに。あのケニーとの恋愛シミュレーションは・・・)
世界初のバイオロイドの開発って、私の恋愛シミュレーションゲームのデータが使われてるって言うの?
私のアイデアが盗まれているわ! それって何よ! だって、その仮想空間には、私の秘密もあるんだ。誰かにイタズラされたらイヤだもの。それにケニーやデヴォス少佐をデザインしたキャラクターがいることも、皆に知られたくないもん。でも、でもでも! もう秘密になんか出来やしないわ!
作品名:L K 3 「フェニックス」 作家名:亨利(ヘンリー)