L K 3 「フェニックス」
エピローグ
惑星アップルの草原の丘、爽やかな風を感じる。
「エルはケイといい仲なのね。私は断然、ジェイの方がいい男だと思うんだけど」
「ケイはとて優しいわ。ジェイは頼れるけど、感情がないの。それが不思議で。リズなら理由が分かるんじゃない?」
(エルとケイには感情があるのに、ジェイにだけはない。どういうことかしら)
私はジェイのプログラムのログ解析をコンピューターに依頼してみた。すると、どうやらケニーが、自分のライバルとなりうるジェイ・ヴァン・デヴォスのキャラクターに、手を加えていたことが判った。
(感情が湧かないように細工していたのね。アイツ、まったくせこい男ね)
私はエルと二人、コロニーを見下ろしながら、尾根づたいに歩いた。その一部は果樹園になっている。私達はその木陰に腰を下ろした。
「エル、自分たちが現実の存在じゃないって判って、つらかったでしょうね」
「ええ、とても驚いたし、困惑したって言うより、やっと気付いたって感じかな。それにリズたちの方が、現実世界の悲劇に耐えられないでしょう?」
「そうね。結局、おばあちゃんもどうなっちゃったのか、分からずじまいだった」
「そう、それは残念ね。でも希望を持って進んで行ってね」
「これからは、エルたちも今まで通りじゃいられないでしょう?」
「そんなことないわよ。もともと私が人間じゃないって気付いた時から、何も変わっていないわよ。私達の生活は現実ではないけど、マダム・スーみたいに、データファイルとして存在はしているわ。それにリズ、あなたの優れたプログラミングのおかげで、私達は進化も続けて行けるから」
「でも、アップル開拓の未来は、どうなっちゃうのかしら?」
「いいえ、ここのリンゴを見てちょうだい。初めはたった一本の木を育てるために、ホログラムチャンバーでシミュレーションを繰り返して、ケイがやっと成功させたの。それが今では斜面全体を覆う果樹園になったわ」
「あなたたち、皆の努力が実を結んだのね」
「それはこれからも変わらない。アップルでは、地球の役に立つ研究が実際に進んでいたし、その成果を現実の世界に持ち出すことも出来るって分かったから。もし、現実世界でSS3000シリーズを開発すれば、私自身もその世界に出ることが出来そうじゃない。こんな素晴らしい夢はないわ」
「そうね。今の地球の技術じゃ、こんなに遠くの惑星に移住するなんて無理だけど、現実の地球再建には、あなた達の技術も役に立ちそうだわね」
「そうよ。私達と付き合っていくことなんか、宇宙人と付き合うことなんかより、よっぽど簡単なはずよ」
エルは、ずっと気になってた胸騒ぎさえ、今は消えたって話してくれた。
私のホロシミュレーションプログラムは、軍によって厳重に管理されることになった。でも私は、その管理者としてのTrustedinstaller(トラステッドインストーラー)の権限は、絶対に譲らなかった。
こうして、惑星アップルのプログラムは、永久に保存されることとなる。
今では、全世界のウイルス“マザー・スー”は、ワクチン“マダム・スー”によって完全に駆除された。大きなダメージを追った地球は、新たなアップル・テクノロジーを駆使して、再建への道を歩み始めるんだろうな。
「あ、そうだ! コンピューター。ここの仮想の地球に、オンタイムで通信させてくれる?」
『はい。プロトコル違反ですが、あなたにはその権限があります』
・・・・・・・・・・・・(プププププ・・・ツツッ)
[・・・もしもし?]
「あ・・・べスおばあちゃん」
[リズかい?]
「うん。ちょっと声が聞きたくなったの」
[一体どうしちゃったんだい?]
「また、近いうちに会えるよね・・・」
完
作品名:L K 3 「フェニックス」 作家名:亨利(ヘンリー)



