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レナ ~107番が見た夢~ 補稿版

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【幸男】

「これ、着てみてよ」
「え? これって……」

 ショッピングセンターでふと見かけた白いワンピース。
 白一色のコットン、ところどころにレースをあしらっただけのシンプルなワンピース。
 それを見かけたとき、レナに着せてみたい、これを着たレナを見たいという衝動が抑えられなかった。
 そして、それを買って鞄に忍ばせ、レナの部屋に持ち込んだのだ。

「似合うよ、レナ……本当に可愛い、本当にきれいだ……」
「……嬉しい……」

 シンプルな白いワンピースを着たレナは一幅の絵のようだった。
 窓ひとつない、いつもと変わらない107号室、しかし、俺の目には青い空が、湧き上がる雲が、きらめく海が見え、爽やかな風が通り過ぎた、そしてその中に佇むレナの姿も……。
 レナはもちろん、そんな景色を見た事はない、そんな景色が存在することすら知らない。
 俺は頭の中に浮かんだ風景できるだけ詳しくレナに話して聞かせてやった。
 レナが決してそれを体験できない事を知りながら……それを知らずに一生を終えるのが良いのか、イメージだけでも持った方が良いのか、俺にはわからなかった。
 ただ、その話を聴いているとき、レナの顔は、瞳は夢を見るように輝いていた。
 
 だが、クローンは私物を持つ事が出来ない、見つかれば取り上げられてしまうだけ、罰を受けないとも限らない。
 俺はその都度ワンピースを持ち帰り、レナに逢ってはそれを着せて、二人で高原の澄んだ空気の中を散策し、海を訪れて波と遊ぶ夢を語り、そしてそのワンピースを脱がせたレナと愛し合った……。