レナ ~107番が見た夢~ 補稿版
きょとんとする107番、その表情も可愛らしい。
「腕枕……しないの?」
「いいんですか? 腕、痺れませんか?」
「俺がそうしたいんだよ」
「それなら……」
107番は俺の腕を頭に敷いてニッコリと微笑んだ。
「すごく良かった」
「本当ですか? 私もすごく感じちゃって、ちゃんとできたかどうか……」
「ちゃんとも何も、俺、こんなに興奮したこと初めてだし、あんなに女の子を乱れさせたのも初めてだよ」
「私も……」
「相性が良いのかな」
「だと嬉しいです」
107番の小さな身体にジャストフィットすると言う事は、やっぱり俺のは小さめだと言うことでもあるが、そんな事はもうどうでも良い、相性ばっちりの相手を見つけられたのだから。
「君は可愛いね」
俺は傍らの107番の身体をゆっくりと撫でながら言った。
「え?……」
「言われない?」
「言われたことないです」
「そんなことないだろう?」
「頭をぽんぽんと叩かれながらなら何度かありますけど」
「ああ、まあ、それだと子供扱いだな」
「実際、まだ子供ですから」
「まだ身体が小さい事は確かだけど、俺が今まで抱いた中では一番だったよ」
リアルでもクローンでも、と付け加えかけて、やめた。
なんとなく107番をクローン扱いしたくなかったのだ。
「ありがとうございます」
クローン女は世辞を使わない、客に失礼のないようにとは教育されてはいるが、客の歓心を煽る必要はないのだ、なぜなら、沢山客が付いても彼女たちに取って何も良い事はないから、まあ、あまり少ないと罰を受けたりすることはあるのかもしれないが……。
「ここ、ぬるぬるになっちゃったね……犯人は俺なんだけどさ」
「うふ……」
その笑顔に嬉しくなって、俺はさらさらした緑色の髪をゆっくりとなでた、すると107番はうとうとし始める……もう夜中と言うよりも明け方、疲れが出たのだろう、にもかかわらず全身全霊で俺の相手をしてくれた……俺はその幼い笑顔を眺めながら髪をなで続け……いつしか眠りに落ちて行った。
「う……うん?」
目が覚めると、隣にはちゃんと107番が居た、俺の胸を触れるか触れないかのソフトさで撫でている。
「あ……起こしちゃいました?」
107番が俺の顔を覗き込む。
「ん? ああ……いいんだ……今何時?」
「もうすぐ12時です」
「ああ……そうか……」
「何か予定が?」
「いや、今日はオフなんだ、明日と明後日もね」
「良かった……」
「君は? だいぶ前から起きてた?」
「いいえ、つい15分位前です」
「そうか……よく眠れた?」
「はい、ぐっすり」
「昨日は無茶しちゃったね、悪かった」
「いいえ……」
107番ははにかんだような顔を見せて言った。
「あと1時間半あります、よろしければもう一度……」
「君は? 大丈夫なの? 身体はきつくない?」
「大丈夫です……もう一度……抱いて……欲しいんです」
そんな言葉を聴いて奮い立たないのは男じゃない。
俺はじっくり愛撫してやり、ゆったりと穏やかに107番と交わった。
出来ることならば後二日まるまる延長したい位だったが、C-インには連続で同じクローン女を買えないと言うルールがある、クローンの安全を確保するために……以前、無茶しすぎてクローン女を死なせてしまい、時間延長でそれを誤魔化そうとした客がいたのだ。
そして、クローン女が特定の客に過度に入れ上げるのを防ぐと言う意味合いもあるのだろう。
後ろ髪を引かれる思いで俺は身支度を始めた。
「また来るよ、次はまっすぐこの部屋に来るけど、良いかな?」
「はい!」
翳っていた107番の顔に灯りがさしたかのようだ。
「俺は幸男って言うんだけど、君は?」
「私は……107番……」
迂闊な質問だった、クローンに名前などない。
「それじゃ呼びにくいな……う~ん、そうだな……レナはどう? 107の0と7でレナ」
「レナ……私の……名前…………はい! 素敵な名前です」
「じゃあ、レナ、必ずまた来るよ」
「待ってます」
俺は最後にレナとキスをして部屋を出た。
フロントで支払いをしている時、ふと思った。
これがレナを買った料金ではなく、レナとディナーを共にした代金だったらどんなに良いか……。
もう俺の頭の中はレナの事で一杯だった。
作品名:レナ ~107番が見た夢~ 補稿版 作家名:ST