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レナ ~107番が見た夢~ 補稿版

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【幸男】

「107号室は何時ごろ空くかな……」
 肩透かしを食ったような気分でフロントに尋ねた、すると……。
「107号室? ああ、あなたですか」
「え?」
「107番は停止しましたよ」
「停止?」
「まあ、我々リアルな人間で言えば死んだと言うことになりますかね」
「死んだ?……まさか……どうして?……」
「ここをこっそり抜け出したんですよ、この建物から離れれば心臓が止まる事を知っていながらね……馬鹿な事を……」
「そんな……」
「知っていますよ、あなたが107番にご執心だった事をね、107番もかなり熱を上げているようでしたからね、これはまずいなと思って同じ遺伝子の別のクローンとトレードする話を進めてたんですがね、ちょっと遅かったようです……法的にはあなたに責任はない、しかし、我々は107番はあなたのせいで停まったんだと思ってますよ……もうここには出入りして頂きたくありませんな」

 レナがいないのならここに来る理由などない……フラフラと立ち去ろうとする俺の背中に辛らつな言葉が投げかけられたようだが、何を言われたのか記憶にない。
 
 レナが……死んだ……。

 俺にはわかる、レナは青い空を見たかったのだ、白い雲を見たかったのだ、煌く海を見たかったのだ。
 それを吹き込んだのは俺だ、俺がレナを海に、山に連れて行きたいなどと夢想したせいだ。
 
 心臓が止まる時、レナは何を見たのだろうか。
 空は、雲は見られたのだろうか……都会の狭くてくすんだ空であっても、それだけは見ていて欲しいと思った。
 そして、その時、俺の顔を思い浮かべてくれただろうか……。
 
 レナと同じ遺伝子を持つ別なクローン?……レナと同じ顔、同じ姿のクローンはきっと他に何人もいるのだろう、だが、レナは一人しかいない。
 俺が愛したレナはもうこの世にはいないのだ……。
 そして、それは俺のせいだ……。