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百代目閻魔は女装する美少女?【第一章】

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「ああそうだな。どうしてだろう。でもこんな性格なんだから仕方ないな。自分が女のからだになっただけでは頑張る価値がどこまであるのか疑問なんだな。」
「そういうことならそれでもいいよ。都ちゃんのからだの変化だけがすべてではないんだからね。それは世界の変化の一端でもあるの。よく胃の調子が良くないと、舌が荒れるでしょ。それと同じだよ。」
「じゃあ、オレは舌にできたポリープか。あれは痛い!」
「そのように考えてくれればいいよ。やがて事の重大性がわかる時が来るかも。」
「気長に待つことにするよ。で、そこのおこちゃまはなんだ。」
 オレの視野に、ギリギリ頭頂部がかすめるのが由梨という女子。身長は140センチに満たないと見た。
「何よ、このセレブに対する口のきき方がずいぶんね。軽~く殺っちゃおうかしら。」
 由梨は顔のカウンターを外した。すると先がギザギザでいかにも凶器っぽい剣に変化した。幅は20センチ、長さが1メートル以上あり、本人とどっこいどっこいで、どちらが武器なのかわからない。
「何、変なナレーション付けてるのよ。これであんたなんか、ばっさり真っ二つなんだからねっ。」
 そう言った瞬間、由梨はオレに斬りつけてきた。びゅんびゅん剣を振る。サラサラと数本の髪が切れて落ちる。まさに髪一重で避けたオレ。
「あぶねえ。こんな狭い部屋で刃物を振り回すんじゃねえ。」
 思わず叫んだオレ。すると由梨は動きを止めた。
「あれっ?剣が動かないわ。」
 由梨は自分の意思で剣を止めたわけではないらしい。
「都ちゃん、これがあなたの能力。『コトダマ』だよ。」
 閻魔女王の瞳がここぞとばかりに輝きだした。
「『コトダマ』だと?古来日本に伝わる『言霊』のことか。あの、言ったことがそのまま現実になってしまうという、アレのことか?」
「そういうことだよ。都ちゃんの言葉の中から、一定のものが選ばれて、『コトダマ』として、自在に使えるものとなるの。今のがそれ。『コトダマ』は発せられた言葉そのものではなく、言葉の意味・内容が具現化するのよ。今回は『刃物=金属』という言葉に反応したらしいね。」
 閻魔女王は一枚のカードを手にしている。
「トランプみたいだが。」
「これは『トリガーカード』というの。これを使えるのは都ちゃん自身と、そのパートナーたる者だけだよ。パートナーには相性があって、誰でもなれるわけではないわ。今のカードは由梨が持つことになるの。これは『ダイヤの9、メタル』のカードだね。金属系の防御が可能となるわね。閻魔大王になるにはこのトリガーカードを集めることが重要だよ。」
 カードは自然に由梨のところに飛んでいった。
「キャアー!!」
 突然、由梨は悲鳴を上げた。顔を顰めて、両手で薄い胸元を覆っている。オレはしっかりその点は確認した。オレは胸に関してはちょっとだけだが、強い関心がある?
「何見てんのよ。あっち向きなさいよ。」
「はあ。残念。」
 オレは一旦由梨の指示に従った。
「どうして、アタシ、こうなってしまったの。女王様。」
 由梨はいつの間にか、水着姿。それも露出度の高い超三角ビキニ。色は黄色。
「トリガーカードは水着に変わるの。水着として常に使用者と共にあることになるよ。」
「ということは、アタシはこいつのパートナーになったということ。嫌だわ。」
「それは仕方ないね。ガマンするしかない。そもそも霊界から釣られたこと自体、由梨は都と繋がりが深いということなんだよ。」
 閻魔女王は高名な僧侶のように由梨を教え諭した。
「ううう。悔しいわ。このセレブがこんなヘンタイオトコと一緒に・・・。」
 由梨は泣きだした。
「ちょっと、待ってくれ。オレの立場はスルーかよ。第一、その由梨っておこちゃまはいったい誰なんだ。」
「霊界からの使者、いや死者でもあるよ。」
「使者、死者だと?」
「そう。何らかの理由でこの世で死んでしまい、霊界にやってきた。でも、由梨にはひとつの願いがある。それを叶えるために、ここにやってきたんだよ。」
「その願いとは。」
「女の子同士の秘密だよ。どうしてもって言うなら由梨に訊いてよね。」
 ひとりは確実に『女の子』ではないハズ。そんなやりとりをしているうちに、この部屋にいるもう一人の人間が目覚めた。
「お兄ちゃんおはよう。今日は早く起きてたんだね。桃は朝食の準備してくるね。」
 目を擦りながら、桃羅は都の部屋を出ていった。
「桃羅は閻魔女王と由梨には気付かなかったようだが。」
 オレは大いなる疑問を閻魔女王にぶつけた。
「をねゐさんや霊界の死者は普通の人間には見えないんだよ。」
 解説は5秒で終了。たしかに、いわゆるユーレイは人間には見えない。だからこそ、オカルト扱いとされているんだからな。たまに心霊写真がテレビなんかに出ると大騒ぎになる。これは普段見えないものが、見えてしまうからこそ起きるパニック現象のようなものである。
「とりあえず、頭の整理をしてくる。」
 そう言って、オレは部屋を出て、顔を洗ってきた。もしかしたら、これまで見たものはすべて夢かもしれない。閻魔女王が言うように、しばらくして部屋に戻ったら、何も見えなくなるかもしれない。仮にオレの部屋にまだいたとしても、見えなければ何も存在しないのと同じだから。そこにいるのに見えないというのはある種不気味であるには違いないが、ずっと見えないのであれば、『ユーレイ不在説』を信奉する物理学者のようなリアリストと同じ。そのうち慣れるだろう。
 1階の食堂で、桃羅が作った朝食を済ませたオレは自己暗示をかけた。『オレの部屋には閻魔女王はいない。霊界の使者・死者は存在しない』。お経のようにこれを唱えながら階段を上った。『さっき見たものは夢、いやそうではあるまい。』という付加疑問文を追加しながら。
 自分の部屋についた。オレの部屋だからノックなどはしない。『不存在の証明』と念じつつドアを開ける。
 そこには誰もいなかった。時計の針は8時を回っていた。

女の子になってしまった。これまでは見た目重視で胸にパットをいれていたのだが、これからは不要となりそうだ。でも心は男。それは変わらない。本質的に喜んでいるわけではない。元に戻る必要性は絶対的に存在する。
「ヘイ、エブリバディ。今日はプリティガールな転校生をイントロデュースするよ。アーユーレディ?」
 担任はピンクのスーツに身を包む眼鏡女教師だ。英語担当でもあり、奇妙な日本語を使う。もっとフツーに喋ってくれ。
『トコトコトコ』。ゆっくり登壇してきた女子。黄色のツインテール。
「かわいい」「めっちゃ美少女じゃん」「ツインテールお似合いだあ」「黄色が眩しい」「めっちゃキュート」「ほんとプリティ!」
 クラスメイトは総じてルックスを褒めているようだ。
「田井中由梨です。セレブの16歳です。よろしくです。」
 自己紹介にしてはひとこと余計だが。言葉よりももっと不必要なものを装着している。
『ピピピ』。
「美少女誘萌力、120、115、209、50、大したことないわね。アタシと比べるとゴミ同然ね。」