赤のミスティンキル その後の物語
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アリューザ・ガルドで使われている魔法は、古代王国アル・フェイロスの遺跡から発掘された魔法書を礎《いしずえ》としている。
――遙かな昔、アル・フェイロスの民の中に突如、超常の力を覚醒させた者達が現れた。“魔法”と呼ばれるようになるその大いなる力は、やがて野心ある者達によって戦乱を呼んだ。大戦が終わった後に古代王国は瓦解する。ここまでは“劫火の時代”と呼ばれている。
“忘却の時代”はそこからはじまる。
歴史書は一切存在せず、長きを生きるエシアルル達の記憶はおろか、神々の記憶からも消え失せているのだ。
アリューザ・ガルドにおける最大の謎である。
“忘却の時代”は六百年に及んだ。
そして、過ぎ去ったあとの事実として、魔法の大部分が失われてしまい、術やまじないのみが細々と残るに過ぎなくなったのである。
先述したとおり、魔法書が遺跡から発掘されるまで。
なぜこのような歴史の空白が訪れ、また去っていったのだろうか?
自然の大災害、神々の怒り、魔導の暴走、“混沌”の支配、冥王ザビュールの復活――過去から現在に至るまで、さまざまな説が賢人やさらにはディトゥア神族のなかでも持ち上がるが、いずれも確固たる証拠がない――
作品名:赤のミスティンキル その後の物語 作家名:大気杜弥