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赤のミスティンキル その後の物語

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(三)

 アリューザ・ガルドに転移した二人。ここ物質界では一週間あまりが過ぎ去っていた。ミスティンキルはウィムリーフを乗せ、空へと駆け上がる。そして魔力によって、自分の身体――今はフィエルのものとなっている――が、どこにいるのか探し当てた。

◆◆◆◆

 フィエルはすでに、オーヴ・ディンデがあった領域まで辿り着いていた。超常の魔導を駆使し、朱色の龍を打ち倒し、さらにはレオズスが作った空間の封鎖をも引きちぎって。
 積年の願望、魔導の究極はついに叶う。
 遡ること千年以上。古代魔術が発掘され、魔法学が始まったときから――

◆◆◆◆

 空を駆るミスティンキルとウィムリーフは、同胞となった蒼龍アザスタンと邂逅を果たすと、速度をいや増して禁断の地へ――オーヴ・ディンデの空域へと飛ぶ。
 禁断の地を守護するは朱色《あけいろ》の龍すなわちヒュールリット。しかし彼はフィエルの放った強大無比の魔導により致命傷を負った。
【貴方をこの地の守りから永久に解放する】
 ミスティンキルが誓うと、誇り高き龍ヒュールリットは翼を広げ、残された力の限り、天の高みへと舞い上がっていき――姿を消した。
 それ以降、この朱色の龍を見た者はいない。
 そしてミスティンキルら三者は、核心部へと到達したのだ。

 絶海に浮かぶ小島のひとつ。そここそがかつて、ミスティンキルが魔女フィエルと対峙した場所、オーヴ・ディンデ最深部だ。両者の激突の結果、メリュウラ島など影形もなく吹き飛んでしまった。
 ミスティンキルの身体を乗っ取った魔女、スガルトの意志を継ぐ者、大魔法使いフィエル・デュレクウォーラは今、余裕の体《てい》で岩場に腰掛け、ミスティンキルら三者を待ち構えていた。

「私を止めに来たのですね?」
 ミスティンキルの声色で、魔女は語る。
【無論。貴様がここまでの妄念をもって果たさんとする望みなればこそ、だ】
 ミスティンキルは言った。
「魔導王国の復活――いいえ。私は国家などに興味はない。不死の研究――私が今ここにいることが、それの結果。すでに果たしている。“光”をつくりあげる――そこに実利はあるのでしょうか?」
【問答など望んではいない。魔女】
「……時を遡る。“忘却の時代”へと」
 魔女は宣言した。
「私はその時代を長く生き、何が起こっていたのかを知る。それが目的のひとつ。そして今の魔法ではない、“原初の”魔法の究極をこそ、私は学びたい。これがもうひとつです」