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赤のミスティンキル その後の物語

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第四部 あらすじ



(一)

 ミスティンキルの意識は、冷たい硝子質の地面に横たわっていた。
 彼は、ここがかつて来たことのある場所であることを知った。つまり、“月の界”であることを。ただし周囲は薄暗がりに包まれている。
 ミスティンキルの身体は依然アリューザ・ガルドにあるが、おそらく人格は魔女のものとなっているだろう。いかな運命の計らいか、意識だけ、この月まで飛んできてしまったのだ。
 月は死者の世界――“幽想の界《サダノス》”へと繋がっている。ならば自分は死んでしまったのだろうか――?
 ここに彼を知る者は誰もいない。“自由なる者”イーツシュレウも、ユクツェルノイレも――
 彼が感傷的になった時、青く輝く月の小さな精霊が一人、飛んできた。
 その全身が水晶か硝子で構成されたような精霊。人の形を象っていながらその顔は無貌――目も口も付いていないものだった。
 性別も定かでないその精霊は語った。
「あなたはなにかの間違いで、ここに辿り着いてしまった。帰る方法をぼくは知っている。ついてきて」

◆◆◆◆

 それはちょっとした冒険だった。化石の森をさまよい、寒々しい硝子質の鍾乳洞を通り抜け、断崖を滑り降り、険峻な岩山を登る――さらには怪異に出くわし、悪心を持った精霊を打ち倒したりもした。
 ウィムリーフがいたら、さぞかし心躍る探検だったことだろう。
 ようやく彼らは目指していた場所――純白の尖塔に辿り着いたのだった。