赤のミスティンキル その後の物語
(五)
ほどなくして、ハシュオン卿は死出の旅に出た。
彼の葬儀は慎ましやかに執り行われたが、フェル・アルム国王、世界各地の魔法使いなども参列した。ハーンやテルタージ夫妻(ウィムリーフの両親)、アザスタンの姿もあった。
そこではじめてミスティンキルはテルタージ夫妻と会い、詫びた。自分がしっかりしていれば、ウィムリーフを失わずに済んだかもしれないと。夫妻はそれを受け入れ答えた。
「時間は逆行するものではない。それは摂理に反している。だからあなたは、私たちも、あの時あのようにしていれば、と過去に囚われてはならない。……娘は良い人と共にあったのだ。自信を持って進みなさい」
それを聞いたミスティンキルは滂沱した。
◆◆◆◆
葬儀は終わり、ハシュオンの館は静寂に包まれる。
と、突如ミスティンキルは身を引き裂くような激痛に襲われる。あろうことか、かのフィエル・デュレクウォーラの核たる魂は、ミスティンキルの中に隠れ潜んでいたのだ! これまではハシュオンの魔力の影響で顕在化することがなかったが、時節の到来を知った魔女はミスティンキルの身体を乗っ取ろうと力を発揮する。
ミスティンキルの必死の抵抗も空しく、彼の身体はフィエルのものとなってしまった――
作品名:赤のミスティンキル その後の物語 作家名:大気杜弥