赤のミスティンキル その後の物語
(四)
エリスメアの魔法学校にも多くの魔法使い見習いが集まるようになり、ミスティンキルは彼らとともに勉学をするようにもなった。ミスティンキルの行使できる魔法は大したものではなかったが、素養は頭抜けていた。ミスティキルは世界の本質を見抜けるほどに成長を遂げていた。学校の誰もがミスティンキルの才能をもてはやしたが、彼は悲しそうな目をするだけであった。
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ミスティンキルもエリスメアも、お互いに心惹かれているのが分かるようになった。だが、ミスティンキルはそれ以上彼女の心に近づくのを良しとはしなかった。彼の心の中は今もって、ウィムリーフへの想いが占めていたのだから。
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長寿のエシアルルであるハシュオン卿にも死期が近づいていた。ハシュオンとエリスメアはミスティンキルを招き、彼の奥底に秘めている赤い魔力、魔導について話し合いを幾度となくおこなった。それは根気の要ることではあったが、ハシュオンたちにとっては知られざる魔導の知識をもたらし、ミスティンキルにとっては自身の魔法回路の接合を促すものとなった。
ある時、ふとミスティンキルは気づいた。彼が再び魔導を行使できるようになっていることを。それを行使するにあたっての正しい知識はすでに習得している。
ハシュオンは彼を“魔導師”と認めた。一方エリスメアは、魔法・魔導を語り継ぐ者、ウェインディル・ハシュオンの後継者として正式に認められた。
作品名:赤のミスティンキル その後の物語 作家名:大気杜弥