オヤジ達の白球 41話~45話
「バッタボックスへ入った瞬間が勝負だ。
まず、3塁手を何気なく見る。
ピッチャーがインコースへストライクを投げれば、
思い切り引っ張るぞ。
そんな風に感じさせるよう、なにげない視線をチラチラと
3塁手へおくっておく」
「三遊間狙いじゃなくて、3塁線を狙って打つと思わせるのか!」
「そうだ。当たれば強烈なライナーが俺のところへ飛んでくる。
そんな風に3塁手に思わせたら、この作戦は成功だ」
「なるほど。そんな芝居をされたら、俺ならおもわず恐怖を覚える。
2歩か3歩、うしろへさがる」
「そうだ。絶対にバントは無いと思わせて、守備位置をうしろへ下げさせる。
それが狙いだ。
そのくらいの演技はできるだろう。
中小零細企業の社長として30年ちかく、世の荒波を乗り越えてきたんだ。
朝飯前だろう。若ぞうの三塁手を騙すくらいは?」
「なるほど。
強打してくると思わせて、三塁手をうしろへさげさせるのか。
そこへバントを転がせば、とうぜん守備が遅れる。
俺は一塁にゆうゆう、セーフで到達できるというわけだな!」
作品名:オヤジ達の白球 41話~45話 作家名:落合順平