オヤジ達の白球 41話~45話
「柊。おまえ、ソフトボールの経験があるのか?」
「祐介。アルツハイマーになったのか、おまえは。
おれが大学までソフトボールしていたのを、もう忘れちまったのか。
まぁ無理もネェ。守備が下手くそだったから、打つだけのDHだったからな」
「そういえばお前のカミさんは、ソフトボール部のマネージャだったな。
なるほど。カミさん狙いでソフトボール部へ入ったのか!」
「ふん。何とでも言え。
いろいろと難問は有ったが、手に入れてしまえばこっちのものだ。
それよりもなんとかして1人、塁に出せ。
よけるふりして当たれば、デッドボールで出塁できる」
「熊のピッチングはいい。だが相手の投手も、かなりコントロールはいい。
残念ながらデッドボールでの出塁は期待できそうにない」
「熊が投げている?。あいつはたしか、謹慎中のはずだろう?」
「ミスターⅩとして投げているから、とりあえずは大丈夫」
「消防はAクラスのチームだ。
それを相手にサヨナラゲームで勝つのは、初戦からして縁起が良い。
おっ。見ろよ。
三塁手のやつ。バントにたいしてまったくの無警戒だ。
本来の守備位置より、ずっと後ろで守っている。
バント攻撃する絶好のチャンスじゃないか」
なるほど。3塁手はいつもの位置より、かなり後方で守っている。
ここまで誰一人バントをしてこなかったので、安心しきっている。
「いい作戦を思いついたぞ」柊が、ベンチの中を見渡す。
作品名:オヤジ達の白球 41話~45話 作家名:落合順平