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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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赤秋の恋(美咲)

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美咲と大森



  大森とは毎日のように顔を合わせる。もちろん工場内であるから、以前のような従業員として接しているつもりなのだが、宏の顔は緩んでしまう。厳しい顔が商店の店員のような笑顔になるのだ。大森は宏よりも身長が10センチ以上低いから、それに、彼女は作業帽をかぶっているから表情は見えないのだが、宏は彼女の反応が欲しい気持ちもあった。
 10日ほどして、大森と会う機会ができた。食事の後はホテルに直行した。宏自身なぜこんなにスタミナがあるのかと思えるほど、性欲は旺盛なのだ。
 彼女の性のテクニックは宏には未経験のことばかりであった。以前の宏であれば、軽蔑の対象の女性かも知れないのだが、今の宏には魅力的に思えるのだ。
 美貌や教養などは、身体を合わせているときには、何の価値もないのだと、宏は彼女から知らされた。ただ、ホテルのドアを閉め、帰路に向かうときには、動物的な自分の姿が空しく感じれれるのだ。
 翌日には美咲から誘いがあった。宏は体の付き合いはできないと分かっていたが、美咲とは20日くらい会っていない。このまま会わなければ縁が切れてしまいそうで、会う約束をした。
 両毛線は岩船から栃木まで不通なので、佐野から栃木までバスになる。宏はその区間はタクシーを使った。小山に着き、美咲に会うと、美咲には美咲の良さを感じた。宏はずいぶんと自分は変わってきたなと感じた。
 美咲の身体の絵柄は派手なのだが、彼女の性行為は大森ほどではないから、宏のモノは疲れているし役には立たないのだ。宏は使えないと分かっていながらも劣等感のような惨めさを感じた。同時に年齢を感じたのだ。
「台風の影響で親会社が休業中だったりでね、精神的に疲れていてね」
「いいわよ。無理しないでよ」
 美咲の労わりは、『期待していないから』そんな風に宏は感じてしまった。
 風呂に入っていると、美咲も入って来た。
「背中洗います」
 美咲の何気ない行動が宏は嬉しく思えた。
 美咲は両毛線が途中不通だと知ると、足利まで送ると言ってくれた。
 車の中での会話が楽しみになると宏は喜んだ。
作品名:赤秋の恋(美咲) 作家名:吉葉ひろし