赤秋の恋(美咲)
教師時代の宏は交通違反でさえも、犯罪と考えていたから、40年間1度も違反はしたことがなかった。生徒たちの模範にならなければという意識が強かったのだ。
1度自分自身から、自分との約束事を破棄し、道徳などを気にしなくなると、警察沙汰にならない範囲なら、女性との交際は良いだろうという気持になっていた。
3度身体を合わせた美咲とは新鮮さが失せていたから、大森の身体は実に、高校生の身体のように初々しさを感じた。
「先生気持ちいい」
その言葉に、宏は自分が若くなった気持ちになっていたのだ。
テレビをつけると、台風の被害が写された。
不謹慎だと一瞬感じた宏であったが、絡んできた大森の身体に、再び愛撫していた。今まで抑圧された欲望がマグマのように噴出した。既に吹き出したマグマは、止めようがないのかも知れなかった。
シャワーを浴び、着替えが終わると、別人のように2人は元の、ラブホテルに入る前の人間に戻っていたように見えた。欲望が満たされると、どれだけ前の自分に戻れたのか、宏には分らなかった。
外観は確かに戻ったのだが、気持ちの中では、金で体の関係になったのではないから、このまま分かれることはできない気がした。
仕事が始まれば、毎日顔を合わせることになる。
「先生大丈夫、セフレでいいから」
「セフレって?」
「セックスフレンドよ」
「そう」
宏は美咲と2人、上手くいくだろうかと不安になり始めた。