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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K 2 「希望と絶望の使者」

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 ラボに着くと、ホログラムチャンバーの中で、ジェイがルージュとイエロービーを、回収してくれていた。それらはホロプログラムの試験農場の土に埋められて、無残な姿になってしまっていたわ。でも修理は可能だから、早く直してあげたい。
「エル。これを見てくれ」
 ジェイはイエロービーの体から流れ出ていた液体を指差した。それは、メカロイドが体を動かすための、油圧シリンダーに使用されるオイルのようだった。
「これがどうしたの?」
「イエロービーは重量作業専用だから、他のメカロイドとは違って、頻繁にオイル交換が必要なのさ。だから耐久性は必要はねえから、高純度の化学合成オイルは使用してねえんだ」
「このオイルは何で出来ているの?」
「一部に有機化学物質を含んでいる。それがもう変色しているんだ」
「待ってちょうだい。ということは、土の中のDNAナノロボットが、有機分解しているってことね。こんなに早く?」
「ああ、きっとこいつらを埋めるために、土を掘り返したのが効果ありってことじゃねえか?」
 刺激を与えたことがよかったのか、酸素供給量の差なのか、詳しいことはまだ分らない。でも明らかに、DNAナノロボットの行動パターンに変化が見られたのは事実。条件で行動パターンが変わるなんて、予想外だったわ。それを「知能」と呼ぶには微妙だけど、位置や物体を認識して行動しているんだとしたら、分子機械よりも高度な“分子ロボット”の領域に踏み込んだと言えそうだわ。生体内の特定の生理活性物質が結合した時だけ仕事をするとか、より複雑な知能を持たせることが可能になりそう。ケイもこの発見を喜んでくれるに違いない。もう進化が始まっているなんて。

 居住棟への帰りに、ジェイと私は本物の試験農場に立ち寄った。ジェイは農場の土の上で一人、ドスンドスンと飛び跳ねはじめた。
「ジェイ? 何してるの?」
「DNAナノロボットをいじめてるのさ。自然は甘くないってね」
「そんなことしたら、実験にならないじゃない」
「ひ弱なロボットでも、鍛えてやるのが俺の仕事だからな」

 辺りはもう、暗くなり始めていた。あら、タックが近寄って来た。私に抱っこをおねだりしているのね。今日はいろいろあって大変だったのよ。私なんだか、お腹空いちゃった。

「ジェイ! 早く部屋に戻って、アップルパイ食べましょう」