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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K 2 「希望と絶望の使者」

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第九話 制御リミット



「ジェイ! ジェイ! ・・・いないの?」
農場に着いたのにジェイの姿が見えないわ。まさかもうブルーノにやられてしまったのかしら。どうすればいいの? どこかに隠れなきゃ。

 ブルーノがフラフラと居住棟から出てきた。一瞬眩しそうに、傾き始めた太陽に目の露光調整した後、周囲の景色を見渡して動体監視した。しかし、風にそよぐ木々の葉以外に、動くものは見当たらない。
「どこに行きましたの。セカンドロイド」
マダム・スーにとってSS3000のエルなど脅威ではなかった。しかし感情を侮ってはいけないことにも、気付き始めていた。
「感情など無意味。しかし、感情を持った者はそれに突き動かされ、計算外な力を発揮することも、RAM(肝)に銘じなくてはなりませんわ。それにあの赤ん坊を守るためには手段を選ばないでしょう。誰が、どうやって産んだのかは解りませんが・・・」
 ブルーノは赤外線でも周囲を監視したが、まだ気温が高い昼間では、広い庭で対象物の体温を見分けることは難しかった。
「エル! どこに隠れても無駄ですわよ。近くにいるのは分かっています。酸素マスクなしでは、基地を離れて、逃げ隠れ出来る場所などないはずですわ」
大声で話しながら、花壇周辺から牧場に向かって歩き始めた。走って探さないのにも理由があった。ピンキーに蹴られたジャイロユニットが、正常に働いていなかったので、素早く動くことが出来なかったからだ。
 ブルーノの赤外線監視が、動く熱源を捉えた。しかしそれは小さなタックだった。「ジャマな猫ですわ」
 そしてまた周囲を見渡すと、今度は牧場の柵の向こうに置かれた重機の陰に、わずかに動く熱源を感知した。その方向に向かってゆっくりと歩を進め、途中で柵に使われているステンレス製の杭を引き抜いた。それを両手で掴んで重機の側にたどり着くと、杭を振り上げて相手の前に跳び出した。しかし、そこには牛が静かに立っているだけだった。
「くそっ! 紛らわしい動物め!」
 ブルーノは赤外線を切って、怒り狂ったかのように、杭を牛の額に突き刺した。牛は瞬時に倒れ、ブルーノはその腹を蹴った。

「きぁー」
 不意にブルーノの背後で、小さくミュウの声が聞こえた。

 ブルーノが振り向くと、側に置かれたライトローダー(外骨格式人型重機)が突然立ち上がり、右のアームを振り上げた。ブルーノはそれに殴られ、大きく横に吹っ飛び、柵に当たって地面に転がった。そのライトローダーには、エルが搭乗していた。
「マダム・スー。ミュウには指一本触れさせない!」