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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K 2 「希望と絶望の使者」

INDEX|45ページ/54ページ|

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「私をどうしようというのです?」
「黙りなさい」
 ピンキーはいつもと違う毅然とした態度で話した。それは赤ちゃんに危険が迫った時に起動される、エマージェンシープログラムによるものだった。
「この体はブルーノのものなのですよ。これを破壊したところで、私には何の被害もない」
「そうね。でも焼き尽くしてしまえば、あなた自身のプログラムも消滅する」
ピンキーはプラズマ焼却炉に向かって進んでいた。
「そ、そんなことをすれば、ブルーノのプログラムも消滅してしまうのよ!」
「あなた怖いの? あなたにも感情があるんじゃない?」
「そんなこと有り得ません! 私は、あなたに仲間のブルーノを破壊出来るのか、聞いているのよ」
「そうね。ブルーノは残念かしら。でも、私には感情がないので」
 この時ブルーノは絶句した。いや、マダム・スーは理解した。このメカロイドには感情がないことを。赤ちゃんをあやす優しい姿は、プログラムのなせる業で、もともと愛情などなかったのだと改めて気が付いた。
「私を殺すなどと!」
ブルーノは暴れた。しかし、まだバランスがとれず、手足を振り回すのがやっとだった。それを見てピンキーは、
「感情がないのなら、諦めなさい」
そう言うと、焼却炉のスイッチを押して、炉にプラズマを充填し始めた。それと同時に周囲の機械が動き始め、辺りは大きな騒音に包まれた。ブルーノは大声で叫んでいるが、それは騒音にかき消されている。しかし、ピンキーにはその声を聞き分ける能力があったが、マダム・スーの命乞いを、背中で無視した。

「オギャー。オギャー。オギャー」
 ピンキーは(ハッ)と動きを止め、その声の方向に振り向いた。しかし、そこにミュウがいるはずもなく、その声色を真似たブルーノが、すぐ足元にいることに気付いた。
(しまった!)
それに溝落ちを蹴り上げられ、ピンキーは後ろによろけてしまった。
 一瞬の出来事だった。転倒しそうになったピンキーの頭部は、後で回転する機械の中に挟まれ、機械は大きな音と煙を上げて止まった。