小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

L K 2 「希望と絶望の使者」

INDEX|3ページ/23ページ|

次のページ前のページ
 

第一話 ロボット



「窒素79.25%、酸素17.32%、二酸化炭素2.35%、アルゴン1.02%。先月より酸素濃度が0.03ポイント上昇しています」
 大きなリンゴを一つ手に掴んで、ケイが大気中の酸素濃度の測定値を私に報告してくれた。アップルの大気は、二酸化炭素濃度が高かったの。外で活動するには、酸素マスクが不可欠だったけど、基地の数キロ周辺では、テラフォームエジェクターによって、水から取り出された酸素を、大気中に放出することで、なんとか酸素マスクなしでも生活出来るようになったわ。それはケイの発明。彼は科学者型のモデルで、コンピューターのありとあらゆる科学知識と直接リンクすることが可能だから、この星の開発にすごく力になってくれている。

「少しずつだけど、この星の環境も地球に近付きつつあるわね」
「はい、各地にエジェクターを増設すれば、100年後には惑星全体をカバー出来るようになるでしょう」
「そんなに早く? 100年なんてあっという間じゃない」
ケイがラボ(研究室)の作業机に腰かけた。ケイはいつも机に座って話すわ。
「それなら、クルーが多ければ、もっと早く実現出来るんじゃねえか?」
ジェイが、机の上にもう一つ置かれたリンゴに、手を伸ばして言った。そして彼はいつも、リンゴを大きくかじる。
「ああ、エルの生殖能力でセカンドロイドを産出し続けた場合、サードロイド(アンドロイドの孫世代)以降の増加も考慮すると、100年後のこの星の人口は、1,000人を超えることも可能だ」
「ははは、私は何人産む計算なの?」
「40人程度です」
「それはゴメンだわ」
「そこで提案なのですが、人手として、SS3000以前のメカニカルロイドを製造してはどうでしょうか?」
「バイオロイドじゃなく、旧世代機種をか?」
ジェイは無表情でリンゴを噛み砕きながら訊いた。
「SK2000シリーズの機能は優れているわ。私たちほど人間に似せられていないけど」
「ところが、SK2000番台は製造出来ません。そのパテントはまだ切れていませんので、基幹パーツを勝手に3Dコピー出来ないのです」
ケイも手に持っていたリンゴを一口かじった。
「じゃ、それ以前のモデルってこと?」
「80EX以前なら可能です」
「その80(ハチマル)世代って言やぁ、もうただのロボットじゃねえか」
「はい。でも決して裏切りません。初期型のメカロイドは人間に対しての安全対策も緻密で、暴力的行動に対して、フールプルーフ(誤った行動に対する制限)がかけられています」
「じゃ、何機くらい製造するつもりだ?」
「まだ大量生産は不要です。まず、ミュウのベビーシッターとしてはどうでしょう?」
私はケイに近付いて、作業机の椅子に腰かけた。
「あの子は、私自身で育てたいんだけど」
「でも一日中、エルが抱いているわけにはいかないでしょう」
「キュウもよく面倒を見てくれているわ。それに、ジェイも優しく抱き上げてくれるし」
「俺は、プログラムで繊細なものを扱うように行動しているだけだ。愛情からじゃねえよ」
「そうなんだ。80(ハチマル)にもその機能が備わっているから、赤ん坊を任せても、事故を起こした記録はない」
ケイはジェイに話しながら、食べかけのリンゴを私に手渡してくれた。その表情から、美味しいリンゴだったみたい。
「そう。じゃ、私たち一人ひとりに1機ずつ付けて、使い勝手をテストしましょう」
私はケイの食べかけのリンゴをかじりながら言った。・・・あら、なんて甘いリンゴ。
「じゃ、5機必要ってことだな」
「牧場の世話係もいた方がいいのではないですか? エル。」
「それはそうだけど、増産はテストが済んでからにしましょう」
「じゃあ、お前さんの世話係も、要らねえんだってよ」
ジェイが、側の椅子の上で丸まっている、タック(猫)の背中を指先でなでた。
タックは、「にゃー」と静かに鳴いた。

 私が設計される50年ほど前の80(ハチマル)世代の機体には、あまり高度な知能は備わっていなかったようだわ。限られた任務に特化してプログラムされて、単純作業を繰り返すために使われていたから。その後、SK世代になってから、人の任務を代行するために、より高度な知能がプログラムされるようになったの。SK2000はその先駆けで、体全体はまだメカニカルだけど、CPUには80(ハチマル)の2,000倍の情報処理領域があるの。私たち3000シリーズの知能は、3,000倍ってわけ。そこまで来ると人間より、高度な演算機能になっているわ。見た目も人間に似せられて、バイオロジカルロイドと呼ばれている。でも、私たちアンドロイドは、人間を超えようなんて思っていない。それでも人類は、感情を持った私たちを、脅威と感じるのかしら。


「いないいない、ばあ」
「ww・・・・・・」
「いないない・・・ばあぁ!」

 キュウがミュウのことをあやしてくれている。キュウが赤ちゃんに接する時、愛情を感じられるわ。父親のケイより、感情表現が豊かってことは変な気がするけどね。
 ケイはホログラムチャンバー内に、保育所プログラムを作ってくれた。ホロプログラム内なら、フェイルセーフ(安全装置)がかけられているから、安全に赤ん坊を育てられる。優秀な保育士のホロキャラクターに任せておいても安心だわ。それに、多くの子供たちもプログラムされているから、ミュウにも友達が出来て、社会性を学ばせることが出来るはず。それに私もそこにいると、とても楽しい。でも、実験でホロチャンバーを使用する際には、保育所を利用出来ないから、私かキュウが、ミュウを見ていないといけないの。

 ケイの計画は、こう。私が基地周辺を開拓する時間が持てるように、子育てに取られる時間を、メカロイドに担わせようとしてくれている。でもベビーシッター(専用アンドロイド)に任せっきりってわけじゃないのよ。いつも私の側に従わせて、ミュウを抱っこしていてくれれば助かるってだけ。その間に、庭にもっともっと植物を植えたい。その作業にも、私にヘルパーを1機付けてくれる。そうすれば研究時間が取れて、乾燥に強い多肉植物でなら、庭だけじゃなくって、もっと広い範囲まで、草原が作れるかもしれない。

 ジェイは普段、インフィニチウムの採掘を担当しているの。それをケイかキュウが手伝ってきたけど、これからはジェイとそのバディ(補助アンドロイド)で行えるかしら。
 キュウには家庭教師が必要ね。でも、本当にサポートが必要なのは、ケイの方。彼はいつも働き詰めだわ。アンドロイドと言えども、肉体には疲労が蓄積するし、脳の記憶領域のクリーンアップや最適化のためには、休息だって必要。だから、彼を手伝うメカロイドの担う役割は大きいと思う。


「ケイ。まず、あなたのアシスタントを製造しましょう」
 私たちは、夫婦の寝室のベッドに横たわりながら話した。
「その子の世話役を、一番に考えていたのですが」
ケイは隣のベビーベッドで眠る、可愛いミュウを見て言った。
「エルには、その次の1機を・・・」
「私とミュウは最後でいいわ。だって、あなたのアシスタントがいれば、次の1機を早く製造出来るじゃない」
「その方が論理的ですが、別に急ぐ必要はありません」