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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K 2 「希望と絶望の使者」

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「今日ぐらいの陽気だと、このわずかな熱量の差でも10ピコグラム程度の質量に変換されるはずだから、理論上110ピコグラムで、妥当なDNAナノロボットの数になるはずだ」
 ケイは自信を持って、ブルーノに指示しているわ。彼は私が最初に伝えた「もっと人の住みやすい星にしたい」って望みを忠実に実行してくれているだけなんだけど、私にとっては、たった一人でこの星の開拓を始めた時から比べたら、ものすごい変化の瞬間なのよ。今までは、持ち込んだ家畜や、人工的に管理した植物を相手にしてきただけだったけど、今日からは、私たちの手を離れて、自然な生命活動が繰り返されていくことになるんだから。

「まさに、大地に生命を吹き込む瞬間ね」
「その通りです。これからすべてが始まるのです」

「あーーーぁーー」
 ミュウが可愛い声を上げた。ブルーノは作業の手を止め、また首を傾げてミュウを見た。ピンキーがミュウを腕に抱きながら顔を寄せ、大きな目を細めて微笑みかける姿を私たちは見守っているわ。皆はどう思っていたか分からないけど、きっとこの子が豊かに育つことが出来る世界を、想像してくれていたに違いない。
 ブルーノがストレージケースから取り出した器具を地面に挿した。中に入ったDNAナノロボットを地中に注入していくためだ。
「エル様。最初はあなたがトリガーを引くべきですわ」
そんなことをルージュが申し出てくれた。この子、気が利くわね。
「そうですね。エル、この仕事はあなたにこそふさわしい」
ケイも同意してくれたわ。
 そして私は全員に見守られながら、その輪の中心に立ち、注入器のトリガーに指をかけた。

「アップルがすべての生命の揺り篭となりますように」

 私は目を瞑り、まるでお祈りでも唱えるみたいに言ってから、ゆっくりと指を引いて、大地に生命を注入していったわ。

「これだけ?」
キュウが聞いた。
「はい、そうです」
ブルーノが答えた。
「なんだか、手応えも何もないわね」
私が地面から注入器を引き抜くと、タックがその部分の匂いを嗅いでる。