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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K 2 「希望と絶望の使者」

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 ルージュが間に入ってブルーノの胸を押さえ、表情は変えないまま睨んだ。それを見てケイは、
「80(ハチマル)に想定されていない状況での使用に、プログラムが追い付いていないのだろう」
 アンドロイドにも個性があるわ。思考スピードや分析能力じゃなくって、経験によって積み重ねられるべき、考え方があるの。子供を育てるのと同じ、相手の意見も尊重してあげないといけない。
「確かに、私たちは人類のために働かなくちゃならないけど、私たち自身を犠牲にすることも求められているわ。それはあくまで人類のためになる場合だけ、そうじゃない今は、それ以上のことは考える必要ないと思うわ」
「・・・そうですね。エル様の仰る通りです」
ブルーノはそれで引き下がってくれた。ケイと私は再び歩き出したんだけど、ルージュはブルーノの前に立って、
「あなたの方が危険よ。今度こんなことしたら、私が許さないから」
と小声で言ったみたい。この時、サッと身を翻し歩き出したルージュの背中を、首を傾げて睨み続けているブルーノの視線には、誰も気付かなかったけど。

 農場に着くとジェイやキュウそしてミュウも、サポートのメカロイドと共に、その場に集まってくれていた。・・・あらあら、タックも来てくれてるね。
「まずは、この試験用地に100ピコグラム撒いて様子を見ます」
そう言って、ブルーノはDNAナノロボットのストレージケースを開封し始めた。いきなりこの農場全体に撒いちゃうと、健康な植物まで分解してしまうかもしれない。念には念を入れなくちゃ。ケイとブルーノは、マダム・スーの指導の下、ホログラムチャンバーでテストを繰り返してきたけど、その時は、DNAで出来た極小ロボットは、らせん状の二足で歩きながら、植物の細胞を運搬して、分子レベルまでバラバラにした。その行動はもはや“生物”と言ってもいいんじゃないかしら。そしてまた別のDNAナノロボットが、今度は窒素やアミノ酸といった栄養素に再構成していった。それは微生物の体内で行われる化学反応を代行してくれているんだわ。
 実地テストは、この畑の一角で100日間行われる予定。その間に環境に応じたトリートメントを慎重に行わないと、それらはなかなか定着しないらしいの。