L K 2 「希望と絶望の使者」
ケイの研究は、“惑星アップルのリサイクル環境の構築”というとても難しい概念。まったく生物のいなかったこの星に、植物を植えたのはいいけど、枯れてもそれをリサイクルしてくれる微生物がいない。私たちアンドロイドは体に菌やウイルスも持っていないし、冷凍保存して運ばれた家畜たちも、もともと無菌状態で飼育されたクローンだから、微生物は持ち込んでいない。自然なリサイクルはほぼ無理ね。
「こういう状況では、ナノロボットが有効とされております」
そのフォトロイドの説明は素晴らしかった。しかし、ナノロボットという発想はケイにもあったけど、自然界に存在する、ありとあらゆる微生物に代わる機能を持ったナノロボットを造るのは、容易ではないでしょうね。
「多様なプログラミングを行うのは、不可能に近いか、出来たとしても何百年もかかると思われますが」
ケイもその意見には懐疑的なようね。
「一つ一つのプログラミングは、途方もない作業となり、実施は困難ですわ」
「それじゃ、代替案があるの?」
「もちろんです。DNAナノロボットを使えばよろしいのです」
「DNAナノロボットですって?」
「そのテクノロジーは、生物兵器の開発に繋がるから禁止されているはずだぜ、マダム」
「今は、厳格なルールが設定されておりますので」
このフォトロイド、本当に信用出来るのかしら。私の疑問や不安は尽きないけど、やっぱりここはアンドロイドっぽく、淡々と進行しなきゃいけない。感情を表に出せないわ。
作品名:L K 2 「希望と絶望の使者」 作家名:亨利(ヘンリー)