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コート・イン・ジ・アクト6 クラップ・ゲーム・フェノミナン

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まさか、と思うことだった。妊娠している女を危険に晒すなど――刃物を持った狂信徒にそれと知ってて襲わせるなど、とても正気と思えない。ひとつ不測の事態が起きて、物事が思わぬ方へ転がったらどうなるか、この杉山という男は考えてもみないのか?

それがデカという人種なのか。この署の所轄刑事どもも? おれは自分を囲んでいるやつらの顔を見渡してみた。

誰もが無表情だった。おれが見ると眼をそらす。後ろめたい思いがあるのが隠し切れないようすだった。

わかってるのだ、と思った。こいつらみんなわかっている。〈だろう、だろう〉の希望的観測で上(うえ)が下(くだ)した決定がとんでもないということを。

この命令は聞いてはいけない。何かひとつしくじれば惨憺たる結果を招く――それを知ってて、なお逆らえず、言われた通りに実行しなければならない。それが〈警察〉というシステム。テロに慌てて不様に踊る官僚どもの血迷い言にダメを出せない大人の社会。

そうだ、こいつらはわかってる。だからおれ達にババを引かせて、失敗したら、『いやいやオレ達としましては、「これはやっちゃいけないヨ」と反対したんですけどね』と言ってとぼけるつもりなのだ。

『殺急さんの顔を立てて、ここはひとつ任せる』だと――よくもイケシャアシャアと。拒めば結局何もかもすべておれ達のせいにしようという肚だろう。

「さあどうする」杉山は言った。「チクタク、チクタク」

「てめえ――」

班長は歯軋りした。だがどうしようもなかった。選択の余地などはない。

決めるしかないのだ。