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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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悠久に舞う 探偵奇談17

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これが瑞の本当の姿なのだ。飾らなくて、子ども扱いされて照れくさくて怒っている瑞。家族にしか見せない顔。紫暮の気持ちは、きっと瑞にちゃんと伝わっている。それがよくわかる。

「行っちゃったね…」

遠ざかる電車が見えなくなってから、郁は呟いた。早く春になって、暖かくなって、そしてまた紫暮に再会するのが楽しみだ。

「寂しいだろ」
「セーセーします」
「嘘つけ、みぃちゃん」
「ねーホントやめて…!!」

笑う伊吹と頭を抱える瑞の背中を見つめながら、郁は春を待ち遠しく思う。花が咲いて新しい季節が来たら、この鬱屈とした気持ちにも何か変化がありはしないだろうかと。

(…まだ、そばにいさせて下さい)

自分は醜くて、ものすごく邪なことを考えて、彼を独占したいなんていう欲深い人間です。
だけど、そばにいたいです。
どうか、こんなわたしから、あのひとを奪わないで下さい。取り上げないで下さい。

そんな郁の祈りも、こっそり零れた涙も、瑞は知らない。

知らないけれど。

瑞もまた同じような祈りを抱えていることに、郁も気づけずにいるのだった。






END

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