コート・イン・ジ・アクト3 少数報告
予知システムは山ほど問題を抱えているが廃止はできない。できないのだ。廃止できないこと自体が問題のひとつとさえ言える。廃止できないから存続するシステム。本当はあってはならないのかもしれないシステム。できるのならば廃止すべきかもしれないシステム。
おれはときどき考える。ひょっとして殺人予知能力は、人という種(しゅ)の愚かさに呆れ果てた神様が見限る前の最後の救いに寄越したものなのじゃないかと。だが人間はその糸をいずれ自ら断ち切ってしまうのじゃないかと。
予知システムは続いているが、人々の信頼などは得ていない。得られるはずもないだろう。これも抱える問題のひとつだ。
人は言う。『なるほど殺人予知者の強制移送でシステムを廃止するというのは無茶だ。しかし他に何か穏やかな方法があるんじゃないのかな。それを考えてみるべきじゃないの?』
ウンごもっとも。ではそいつに訊いてみよう。『他の方法』ってどんな方法?
すると返事は必ずこれだ。『いや、それは、ボクにはわからないけどさ。でも、きっと何かあるよ』
こう言うだけでまったくなんにも考えない人間が圧倒的多数を占めているのが今の浮き世の現状ってわけだ。殺人課がアレコレ言われ突(つつ)かれる日々に終わりは来ないだろう。
でもまあ、それが警察ってもんだ。せめて不祥事を起こす野郎が減ってくれるといいのだが。
作品名:コート・イン・ジ・アクト3 少数報告 作家名:島田信之