コート・イン・ジ・アクト3 少数報告
まあともかく、どっかのバカ映画のように広い国土に能力者がたった三人くらいしかおらず、おまけに後から生まれることがまったくないというのでは、システムなどそもそも成り立ちはしないのだ。もしやっても何日とも耐えられず全員死んでおしまいになるに決まってる。
〈致命的欠陥〉てのはそういうのをいうんであって、努力でなんとかできないこともないうちは欠陥と言わず〈問題〉とか〈難点〉とか言うんだよな、日本語では。
さて前田巡査ってのが、本当に隊長の言う通りの期待すべき人材なのか。彼女は挨拶を済ませるとすぐ、別の人間に連れられて部屋を出て行ってしまった。オオヤの区画に行くのだろう。
殺人課は県警本部生活安全部に属しており、神奈川ではこの厚木署に間借りする形で拠を構えている。厚木署の所轄署員はおれ達を下宿人と呼び、おれ達はその彼らを大家と呼ぶ。横の交流は無いに等しく、互いの顔もロクに知らない。
なのにあの子、所轄で研修かと思った。あまり聞かない話だが、それだけほんとに期待されてるってことなのかしらん。
それはさておき、隊長は彼女の他にもうひとり女の客を連れていた。女と言ってもあの子の倍は歳を食ってる。しかしどっかで見たような……。
「ええと、もうひとり紹介する。テレビなどでみんな見たことあると思うが、こちら、相原美咲博士だ」
「相原です」と彼女は言う。
思い出した。有名な学者だ。
忘れていたのはどうやらおれひとりくらいらしい。気づいてみると零子などは、おれの隣で驚きの眼で彼女を見ていたのがわかった。
作品名:コート・イン・ジ・アクト3 少数報告 作家名:島田信之