ヘルメットの中の目
Ⅱ
都内の大学のテニスサークルが参加する比較的大きな大会が、春と秋の年2回開催される。その春の大会が終わった後の打ち上げで、たまたまその先輩の近くに座った。当時の私としては精一杯の勇気を振り絞って、先輩に話しかけた。
話してみてわかったのだけれど、先輩は見た目とは裏腹に口数がそれほど多くなく、会話が途切れてふと黙ったときに、なんとも言えない陰が表情をよぎる時があった。かと言って決して性格が暗いわけではなく、話せば普通に反応が返ってきて、きちんと会話のキャッチボールができる人だった。(たまに、会話のキャッチボールをしようとしていきなり会話のデッドボールを投げつけて来る人がいるけれど)
先輩との会話を続けるうちに、バイクの話で意外と盛り上がった。
話の成り行きで、次の週末にバイクに乗せてもらえることになった。もちろん私は二輪の免許を持っていなかったので、リアシートに乗せてもらってタンデムでどこかに行こうと言うことだった。
作品名:ヘルメットの中の目 作家名:sirius2014