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ヘルメットの中の目

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私は高校を卒業して、ある都内の大学に入学した。その大学は、1・2年次の教養課程は郊外のキャンパスで授業を受け、3・4年次の専門課程は都内のキャンパスで授業を受けることになっていた。
高校のときにテニス部に所属していた私は、その大学でテニスサークルに所属することにした。私が所属したテニスサークルでは、あるテニスコートを定期的に借りていて、そこで練習を行っていた。
その練習に、いつもバイクでやって来る先輩がいた。排気量が1000ccの大型のバイクで、背中にラケットを背負い、テニスコートの駐車場に停車してフルフェイスのヘルメットを脱ぐ姿が、さっそうとして格好良かった。その先輩は身長が180cmくらいあって結構ルックスも良かったから、特に格好良く見えたのかも知れない。
その姿を見ていた私は、バイクに興味を持った。
今となってじっくりと考えてみると、当時の自分は気が付いていなかったけれど、バイクへの興味と言うよりもその先輩への興味が先だったのかも知れない。
とにかく、私はその先輩のバイクに乗る姿に憧れて、自分でもバイクに乗りたいと思うようになった。
しかし、女子高出身の私は彼氏がいたこともなく、それどころか男の子と話したこともろくに無くて、気軽に男の先輩に話しかけることができず、いつもその先輩を目で追うだけだった。
上級生の女性に何げなく先輩の話を振ると、皆申し合わせたように、微妙な表情を浮かべて話を逸らすのが気になった。あまり突っ込むと先輩を意識しているのがばれるのではないかと思い、あまり詳しく聞くことができなかったが、それでも先輩の同学年の人が、以前その先輩に彼女がいたようなことをちらりと漏らしたことがあった。私は、以前にどんなことがあったとしても、今現在彼女がいないのなら、それで構わないと思った。

作品名:ヘルメットの中の目 作家名:sirius2014