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コート・イン・ジ・アクト

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そう思ったのは、この部屋のひどい悪臭のせいかもしれない。おれはそいつのナイフを奪い、柔道技で投げてやった。そいつは何が起きたのかもわからない顔して床に転がった。

引きずり起こす。頭を掴んで壁に叩きつけさせてやる。

そうして言った。「手を後ろにまわして組め! おれは殺急だ! 抵抗すると殺すぞ、いいか!」

「は、はい」震え上がってる。

手錠を掛けて、ボディチェック。いつも思うが、『ちぇっ、なんで』と言うところだ。こんなナメクジ野郎の体にどうしておれが触らなきゃならんのか。

どうせならあっちの女の子のお相手したいところなのだが、それは相棒の仕事だった。首輪を外して体をさすってやったりしながら、「もう大丈夫」とか言っている。

名前は零子(れいこ)。おれの相棒は女なのだ――別に特別なことじゃない。殺人者の恐怖に晒される被害者が女性と子供が主となることから、殺急隊は男女のペアが基本だった。

ボディチェックを終えたところで、班長とその相棒が戸口に顔を覗かせる。おれは班長に男を渡して、あらためて部屋の中を見た。

マルキュウ(要救命者)の首から零子が外した首輪。ベッドの柱とロープで繋がっている。こいつの絡まり具合が悪くて、この彼女は脳酸欠になるはずだったのだ――今から一時間後に。

班長の宣告が聞こえた。「平山行夫(ひらやまゆきお)だな。監禁の現行犯で逮捕する」