コート・イン・ジ・アクト
どうせならあっちの女の子のお相手したいところなのだが、それは相棒の仕事だった。首輪を外して体をさすってやったりしながら「もう大丈夫」とか言っている。
名前は零子(れいこ)。おれの相棒は女なのだ――別に特別なことじゃない。殺人者の恐怖にさらされる被害者が女性や子供が主となることから、殺急隊は男女のペアが基本だった。
ボディチェックを終えたところで、班長とその相棒が戸口に顔を覗かせる。おれは班長に男を渡して、あらためて部屋の中を見た。
マルキュウ(要救命者)の首から零子が外した首輪。ベッドの柱とロープで繋がっている。こいつの絡まり具合が悪くて、この彼女は脳酸欠になるはずだったのだ――今から一時間後に。
班長の宣告が聞こえた。「平山行夫(ひらやまゆきお)だな。監禁の現行犯で逮捕する」
作品名:コート・イン・ジ・アクト 作家名:島田信之