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「あの世」と「寿命」考

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「死に方としては、一番いい死に方だっていうわけね」
「不謹慎かも知れないけど、そういうこと」
 と綾子は、そこで話を結んだ。
 だが、それはあくまでもこの世でのこと、あの世のことには今まで触れていなかったが、綾子はすぐに話を拡大させた。
「あの世では寿命が中心と裕子は言ったけど、私の今の話から派生させると、あの世での寿命というのは、どういうことになるんでしょうね? そもそもあの世では人は生まれてから死ぬというこの世の人生のようなものが存在しているのかしら?」
「今考えられているあの世というのは、死んだらそのままの状態であの世に行くという考え方よね。ということは若くして死んだ人は、そこから先の人生を歩むことになるとしても不思議はないんだけど、この世で寿命をまっとうした人はどうなるのかしらね? 老衰で身体がボロボロのまま、あの世に行くことになるのかしら?」
 綾子の質問に答えるわけではなく、裕子も自分の疑問を口にした。
「きっと、あの世のことをいくら想像しても、結局は同じところに戻ってくるしかないと思うの。それがあの世の定義のようなもので、この世の姿でそのままあの世に行ったとしても、結局はあの世という場所で、また同じところに戻ってくる運命が待っているとすれば、おのずとあの世の種類にはパターンが存在するような気がするの。そのパターンが死んだ時のその人の状態によって変わってくる。つまりは言われているように、この世でのその人の素行によってどのあの世が選ばれるかではなく、死んだ時のその状態によってあの世が決まってくると考える方が、辻褄は合っているんじゃないかって思うのは私だけなのかな?」
 綾子がこの考えは最初から持っていたわけではないと裕子は感じた。
 二人で話をしているうちに、いろいろな発想が生まれてきて、これからもどんどん不思議な発想に二人で足を踏み入れていくことだろう。あの世に行けば違う生き物に生まれ変わるという発想であったり、あの世とこの世を行ったり来たりするような輪廻転生という考えであったり、宗教的な考え方がいくつも頭をもたげたりすることだろう。
 ただ、裕子も綾子も、あの世とこの世を繋ぐ見えない糸は、寿命というキーワードと切っても切り離せない関係にあるのだと考えるようになっていた。
 あの世からこの世を見た時、同じように考えている人もいるかも知れない。
――今なら、その人と話をすれば、分からないこともすべてが明らかになるような気がする――
 と、裕子も綾子も考えていた。
 そして、あの世にいるであろうもう一人の自分の存在を、信じて疑わないことで決まった人生の上を歩かされていることも悪くないと考えるようになっていた。
「鏡に写った自分。本当に自分なのかしらね?」
 と裕子が漠然と言ったが、
「そうね。あの世の人かも知れないわね」
 と、違和感もなく口にした綾子は、裕子と同じ発想の元、遠くを見る目をしていることを当然のように受け止めていた……。

                  (  完  )



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