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不老不死ロリの国 第五部分

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大ナタと牙剣が噛みつき合うようにぶつかって火花を散らしている。その脇から木憂華が毒々しい液体を萌絵にぶっかけするが、その攻撃は萌絵の視界に収まっており、ギリギリのところで避けている。しかし、二対一のバトルは萌絵に不利。徐々に萌絵は押され始めた。萌絵の足元がややふらついていることを吝奈は見逃さなかった。
「キューリー夫人博士さん、いいですわね。」
「わかったじゃん。」
キューリー夫人博士は赤紫の液体を萌絵の足にかけた。
「そんなのを避けるのはカンタンだよん。」
木憂華は同じ攻撃を執拗に繰り返し、萌絵が体を前後左右に移動させてかわすというのがしばらく続いた。
「そろそろいい頃合いですわね。」
「よくわからないことを言うじゃん。これだけキッチリ攻撃を回避している、つまりムダに注射して、もう薬物がなくなったんじゃないかだよん。」
「その通りじゃん。でも、校長、自分の周辺を見るじゃん。」
「あれ?もう空いてる場所がないよん。これって、追い込まれたってこと?」
萌絵が立っているところは赤紫一色になっていた。萌絵が立っているところは赤紫一色になっていた。
「はい、最後のピースがきれいに埋まって完成ですわ。」
『バキッ。』
吝奈の牙剣が萌絵の額を襲った。
「やられたよん。ばたん。」
余裕を持って倒れた萌絵。倒された感はかなり乏しい。
「もえだけじゃなく、この世界の人間は、不老不死ではないけど、3月1日から後ろにいかないなら死なないよん。」
「校長は開き直っているみたいだな。勝負に負けたんだから、正々堂々と義務を果たせよ。」
昆太は強い調子で萌絵に要求した。
「オニイチャンがそんなに厳しく言うと思わなかったよん。ぐすん、ぐすん。」
「ぐっ。」
 一瞬、言葉に詰まった昆太。
女子高生の泣き顔は最終兵器である。しかも泣いているのは外見上箱子である。さすがの昆太も切っ先が鈍っていた。
「な~んて、動揺するとでも思ったか。俺は天下のロリ王を目指す男だ。女子高生の泣きでふらつくものか。ははは。」
「お兄様。ちょっとオブラートに包んではいかがでしょうか。」
「さあさあさあさあ、やってくれよ!」
吝奈の諌言はハズレ馬券になった。
「そこまで言うならやってやるよん。でもよく聞くよん。3月1日の壁を破るんだよ。ここ重要だよん、テストに出るよん。破るんだよ、オトメもえのハジメテを破るつもりなのん?」
「誤解を招くような表現を使っての脅しか。」
「ペンは剣より強しだよん。」
「それはマスコミが弱さを認めたくないから使うただの方便だ。オトメのハジメテだろうが、オトメイトだろうが、お留婆さんだろうが、何でも破ってやるぜ。」
「オニイチャン、その3つはすべてお破り禁止だよん。でもどうしてもやぶりたいなら願い叶えるよん。どうなっても知らないよん。ぶちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー。」
萌絵はいきなり昆太にキスして魔力を吸収した。
昆太は一瞬でブラックアウトした。

「・・・・・・・・・・。」

何もない感覚、誰もいない圧倒的な虚無感。無限に広大な宇宙を誰も想像できないのと同じく、虚無を人間が理解するのは不可能である。
「どうして時間進行を止めたのが3月1日だったのか。」
「それを超えると世界がなくなるからだよん。ロリ国では取り替えして、時間進行を止めていた。そしてオニイチャンは、すでに気づいてるようだけど、ロリ国は不老不死じゃないよん。」
「ああそうだな。次元の歪みがあって、そこから他の世界のロリと入れ替えているんだな。それは記憶を含めて異次元の完全同一体ということ。衣服の痛みまでは再現されてなかったので、気がついたんだけど。」
「その通りだよん。3月1日でループすると、『時間飽き』という新たな次元歪みが発生するので、体験記憶は残るようにしたよん。それを拒否するなら壁を破るしかなかったよん。次元の歪みはなぜ存在するのか。それは不合理な世界を維持するため。『不合理の、不合理による、不合理のための世界』。ご存知の通り、この世の大半は不合理でできている。もともとはすべてが合理的であったはずだが、時間進行と共に合理の歪み、すなわち不合理が発生してきた。それは自分たちの人生を考えれば容易に理解できるだよん。どれだけ多数の人間が不合理に苦しみ、それを少数の人間が嘲笑う。合理と不合理のバランス。それは人数の問題ではない。合理、不合理という観念の均衡のことだよん。そのバランス取れていた時代は良かったが、それは長続きせず、観念量に差異が発生した。それは世界中に拡散し、やがて次元に歪みが生じた。次元の歪みは同一次元の分裂を招き、幾つものパラレルワールドが出現した。そのひとつがロリ国だよん。」
「う~ん。さすがについて行くのが厳しい理論になっていたな。でも次元の歪みと3月1日の壁はどういう関係がある?」
「この世界の壁は次元の歪みの異常拡散の、いわば防波堤だよん。破壊すれば想像を絶する勢いで、次元の歪みが分裂し、世界の許容限度を超えてしまうよん。」
「キャパオーバーとなったら、世界はまさか?」
「そのまさか、つまり赤点だよん。」
「いきなり所帯じみたな。それがこの虚無ということなのか?ちょっと待てよ。虚無というのは何もないということで、この意識はいったい何だ?我思う故に我あり、ならば俺は今ここにいることになるぞ。」
「これは終末の記憶。ほら意識がジョジョに旅立っていくよん。これがホントのジョジョ立ちだよん。」
「こんなジョジョ立ち、いやだあ!俺を、世界を返してくれ~!」
「その言葉待ってたよん。ブラックアウト解除!」
『パッ。』
音もなく周囲が明るくなり、昆太の視界が復活した。
「あれ。俺はいったい何をしてたんだ。虚無はどこに消えた?いや虚無に消えるという表現はおかしいぞ。」
「ひとり問答で自爆するんじゃないよん。」
「あれ?箱子、いや校長か。吝奈と木憂華もいるぞ。3月1日の壁を壊したんじゃ?」
「さっきのはオニイチャンのブラックアウト、つまり意識を奪って、脳内に投影したシミュレーションだよん。」
「そんなバカな。記憶には鮮明に残っているぞ。」
「大脳の記憶とは映像がすべてじゃないよん。むしろ意識だけのものの方が同じ脳内感情に直結するよん。それはどうでもよくて、オニイチャンが虚無を拒否ったから、その希望通りにやったまでだよん。虚無は起こらず、ただの現実、日常に戻ったよん。3月1日の翌日は虚無。その歴史は変更不能だよん。」
「そうだったのか。俺は日常を選択したんだな。よかった。虚無なんてゴメンだからな。3月1日が終わらないとしても、この方がぜったいにいい。ハグ、ハグ、ハグ。」
昆太は箱子兼萌絵、吝奈、木憂華を全力抱擁した。
「ちょっとやめてよ、いややめないでよ、お兄ちゃん。」
「く、臭くて苦しいですわ。でも気持ちいいですわ、お兄様。」
「毒々しいけど、注射したくなる血液じゃん、あんちゃん。」
三人の拒絶(+ちょびっと受容)にも拘わらずひたすら抱擁し続ける昆太。
『ウイン、ウイン、ウイン、ウイン』
 けたたましいサイレン音が昆太の鼓膜を破る勢いで聞こえた。
「楼李昆太。女子高生へのセクハラの現行犯で逮捕する。」