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黒いチューリップ 12

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「おっ、お前ってガキは……、そいつらにも同じ話を持ち掛けてたのか?」
「違うよ。オジさんに断られたら、そっちに話を持って行こうかなって考えただけさ。だって、母さんのお気に入りはオジさんだったからね。でも、あのスーパーの店長も四十歳を過ぎてるけど独身らしいよ。買い物に行く度にさ、ニヤニヤしながらオレの母さんに声を掛けてくるんだぜ」
「……」
「じゃあ、失礼しました。そろそろ帰ります」
「ま……待て」
「え?」
「待てと言っているんだ。帰らなくていい」
 
 そこで見せた床屋の表情は今でも忘れられない。顔いっぱいに苦々しさが浮かんでいた。たかが中学生の小僧に手玉に取られた悔しさだ。やっとオレの狡賢さに気づいたみたいだった。
 
 「話はオレがつけた。月曜日に床屋のオヤジに抱かれろ」 
 こう告げた時、母親は何も言わなかった。ただ食器を洗う手の動きが僅かに止まっただけだった。何を言われても素直に従うしかない、そう観念しているらしい。
 母親が自分の息子に違和感を覚えたのは、産んで間もなくだったようだ。まだ産婦人科病院から退院もしていなかった。
 小学校六年の二学期が終わるころ、私立の有名中学校から特待生として受けると通知が届いた時に、父親が洩らした。
 「お前は自慢の息子だ。素晴らしい。だけどな、お母さんは産婦人科病院で起きた事件のショックからだと思うけど、お前を自分の子供じゃないと言い出した時があったんだ。あっはは。今じゃ笑い話だ」そこで父親は真剣な表情になった。「もう中学生になるんだから話してもいいだろう。実はな、お前が産まれた病院で悲惨な事件があったんだ。気が狂った看護婦が、お前が寝ていた隣の赤ん坊をピンセットで刺して殺してしまったのさ。たまたま近くに父親がいて止めたから、それ以上の犠牲は出なかった。その看護婦は我が子を殺されて逆上した父親に殺されたけどな。俺は病院に着いたところだった。新生児室へ行ってみると、お前は血まみれで殺されたのかと思ったぐらいだ。大変な事件だった。バカな看護婦を殺してくれた、その父親に感謝したい。そうしなかったら、お前も殺されたかもしれないんだ。学校の成績は優秀だし、スポーツは万能で絵の才能もある。俺にとって宝のような息子なのに」
 言われてみると頭の片隅にそんな記憶が残っているのに気づく。しかし聞かされた話とは少し違う。その父親は最初に看護婦を殺したんじゃなかったか。それから隣に寝ていた赤ん坊を抱き上げて、その首に何かを突き刺した。真っ赤な血がほとばしった。少年は血を浴びせられ続けた。生暖かくて心地良かった。 

 息子が能力を発揮すればするほど父親は溺愛するようになった。
「お前はオレの全てだ。お前は間違いなく成功する。お前ならオレが出来なかった夢を実現できる。そのための援助は惜しまないからな」
 小学校六年になるころには、はっきりと息子中心の家庭になった。 
少年は家でしたい放題だ。まず三つ年上の姉に手をつけた。思春期を迎えて色気を帯びてきたところを頂いた。初めっから無抵抗。弟には逆らえない、そんな気持ちがあったようだ。彼女には中学校から付き合っていたボーイフレンドがいたが、結局それまで。高校二年の姉は、たちまち少年の性欲の虜になった。
 日中に姉弟が裸で抱き合う姿を母親が目にするのは時間の問題だった。父親の方は姉弟の仲がいいと喜んでいただけかもしれないが、女だけに何か怪しい雰囲気があると気づいていたのは確かだ。もちろん姉は性行為を秘密にしたがっていたが、少年の方は逆にバレることを期待していた。
 その日、いつも通りに学校へ行く振りをして家を出た姉弟は、母親が自転車でカトーヨーカドーへ買い物に出かける時間を待って、こっそり戻ってきた。
 誰も居ないはずなのに姉の部屋から物音が聞こえる。家に帰った母親が不審に思ってドアを開けた時は、まさに自分の娘が全裸で跪いて、弟の勃起したペニスを美味しそうに頬張っているところだった。
 少年が意図した通り、強烈なショックを与えた。金縛りにあったように母親は動かない。何秒かすると、その場に腰を落として手をついた。呼吸が荒い。
 少年は姉から離れると、苦しそうにしている母親の横に立った。放心状態で何の気力も体力も残っていないことを確かめてから、おもむろに膝を突き、勃起したままのペニスを今度は母親の口に捻じ込んでいった。

 「亭主を失望させたいのか? 家庭を打ち壊したいのか? お前が黙って我慢している限り、うちの家は平和なんだ」
 この言葉で母親を服従させた。しばらくの間、高校生の瑞々しい女体と三十代の成熟した女体を交代で犯す日々が続く。そのうち母親の方を他の男に抱かせて、小遣いを稼いでやろうと考えた。
 最初の客は父親が通う床屋のオヤジ、二人目は駅前にあるスーパーの店長だ。どんどん、お得意を増やしていくつもりだった。田所とかいう金払いのいい、君津に住む米屋を紹介してくれたスーパーの店長は、次回は割引き料金でプレーさせてやってもいいだろう。
 但し、あの床屋のオヤジには追加料金を請求したかった。少年も呆れるぐらいの性欲の持ち主なのだ。
 約束した二時間は、休むことなしに母親の裸体を弄ぶ。手錠とロープを使って自由を奪い、あらゆる手段で女を辱めるのが趣味らしい。母親の消耗が激しすぎた。
 「あの人だけは許して。とても体が持たないわ」二度目のプレーが終わると母親は訴えた。
「もう少しだけ我慢しろ。他に楽な客を見つけたら、あいつは断ってやるから」そう言って少年は宥めた。
 しかし女っていうのは不思議な生き物だ。あれほど嫌がっていたのにプレーが七度目を越えるころには、すっかり母親は床屋のオヤジに順応して喜びを覚えるまでになってしまう。
 客との性行為は隠しカメラで記録してあるので少年には母親の変化が一目瞭然だ。「どうしたんだよ、お前? 今では床屋のオヤジに抱かれるのが楽しいみたいじゃないか」
「……」母親は恥ずかしそうに下を向いたままで、否定はしなかった。
 
 その床屋のオヤジが今日の客だ。この時間、あのデブは様々な道具を使って母親を悶えさせているはずだった。
 少年は追加料金として幾ら請求してやろうかと考え始めた。トータルで十万円ぐらいは貰いたい。ただ、あのケチのことだから素直に支払いに応じることは絶対にない。納得させられるだけの何か言い訳を作り出さなくてはならなかった。
 何がいいだろうか。父親が現れるまでにアイデアが浮か--。
 「うへっ」少年は吹き出した。
 いきなりだ。思考も中断するほど野暮ったい格好をした中年女の姿が目に飛び込んできた。
 女は数十メートル先の駅の階段の入り口に立っていた。誰かと待ち合わせでもしているのか、そこから動こうとはしていない。
 なんて派手な服装だよ、あのババア。恥ずかしくねえのか。
 ピンクのスエット・シャツに緑のトレーニング・パンツだ。ここは駅前だぞ。お前ん家の自宅の居間じゃねえ。さらに人目を引いて滑稽なのは頭に巻いた大きな白い包帯だ。階段から転げ落ちるみたいな、よっぽど酷い怪我でもしたらしい。通り過ぎる誰もが一目見るなり、汚いモノを避けるようにババアから距離を取ろうとした。
作品名:黒いチューリップ 12 作家名:城山晴彦