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時間差の文明

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――浩平が私のお兄さん?
 そう思いながら帰宅すると、家では喧騒とした雰囲気になっていた。
 父親が慌てていて、顔面が蒼白になっている。
――こんなお父さんを見るのは久しぶりだわ――
 と、思ったほどだ。
「どうしたの?」
 と聞くと、
「お母さんが、交通事故に遭って、亡くなった」
 そこまで言うと、父は口をつぐんでしまった。それ以上の言葉を期待するのは無駄であろうし、聞きたくもない気がした。
――これだったんだ――
 ここ数日、浩平のことや、もう一人の自分のことを狭い視野の中で考えていたが、もう一人の自分が表に現れたのは、母の死の予感があったからなのかも知れない。
 今までは母の力でもう一人の自分が表に出てこなかった。いや、母の力ではなく、存在感と言えばいいだろう。
「お母さんは、すべてを知っていたのかも知れない」
 そう思うと、母の話を思い出した。
「私の人生も、お母さん、つまり、あなたのおばあちゃんが亡くなった時に変わった気がしたの。それまで狭い範囲でしか見えていなかった自分が解放された気がしたの。すぐには分からなかったけど、解放されたというよりも、最初は、運命が決まってしまったような気がしたのよ。あなたにもそういう時が来るかも知れないわね」
 と、言って笑っていたが、それがまさしく今だというのだろうか?
 未来を創造した「カリオス文明」。それは千鶴と浩平の運命を示唆するものなのかも知れない。天井が割れて、そこから覗いているもう一人の自分、そして、
――すべてのモノは、元に戻ろうとする習性がある――
 という堂々巡りの発想。
 それらは、「カリオス文明」に、限りなく結びついているように思えてならない。だが、千鶴と浩平が本当は兄妹なのかどうかは、きっと千鶴が死ぬまで分からない気がしていた。
 そう、分かるとすれば、自分たちの子供だからである……。

                 (  完  )



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作品名:時間差の文明 作家名:森本晃次