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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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a Suspicious Man

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 翌日、謎のスーツの男の書き込みはソルシティ中で大騒ぎを起こし、SNS上でもユーザーたちの間で推理合戦状態となった。もちろん、そのことはG4の知るところとなった。書き込みを見つけたのはロジャーだった。
「…何だこれ」
 彼は、取りあえずそれを声に出して読んだ。
「『1月18日午前10時、太陽の都に咲く『ヒマワリ』の中で35が失われる。同日15時より前に、小麦の香り満ちる場所で35が失われる。5時間で70人とか、余裕だな。こんな手ぬるい殺しよりも、もっと大事なステージに進みたい』…?ちょっと何言ってるか分かんねぇ」
 ロジャーが投げやりな感じで言うと、ジョンが話しかけてきた。
「でも、『失われる』って言葉が2回も出てくるから、穏やかな内容じゃないね。しかも、日付の指定が明日だし」
 弟たちのやりとりを聞いて、フレディがおもむろに顔を上げた。
「ほっとけ、どうせいたずらか何かだろ。第一、そういうところに書き込んだとおりに事件起こしたパターンなんて、ほとんどないじゃん」
 ジョンはロジャーと目を合わせて言った。
「それもそうだね」
「じゃあ、スルーしていいな」
 ロジャーがそう言うと、スマホを弟のほうに軽く突き出した。
「というわけでジョン、ゲームしよっか」
「ゲーム?いいよ」
 四兄弟の末っ子は、すぐ上の兄のゲームに付き合うことにした。また、長男と次男がすっと立ち上がった。
「俺、図書館行ってくるわ」
 ブライアンが言うと、フレディは
「じゃあ俺、ちょっとコンビニ行ってくる」
 と言って、弟と同時に外出した。


 ― 図書館にて
 ブライアンは、「古代民族の世界」と言うタイトルの本を見つけた。
(これだ)
 そしてその本を手に取って、椅子に座って索引から見始めた。索引の「G」の欄に、「Garou」という言葉を見つけ、それの載っているページを開いた。そこには、ガルー族のことが詳細に記されていた。それを大まかにまとめると、こういうことだった。

 ガルー族はもともと古代人の狩猟民族だったが、彼らが拝む狼神の祭儀中に神像から発せられた不思議な波動を浴び、狼の能力を得た。それ以来、力をつけたガルー族は他民族を「ホモ・サピエンス」と呼んで蔑むようになり、好んで周辺諸国を侵略していった。この蛮行を止めるために、それぞれ火、水、雷、土を拝む4部族が協力し、数多くの犠牲を出しながら、ガルー族を封印したのだった。その後、その4部族は交じり合って一つの部族となり、今のイギリスに当たる地に定住するようになったという。

 ブライアンは今まで知らなかった歴史の一部を知り、いろいろと考えた。
(ガルー族も特殊な波動を浴びて、あんな力を得たのか…。さしずめ、俺たちのダークバージョンと言ったところか。そしてガルー族を封印した火、水、雷、土を拝む4部族、彼らがのちに今のイギリスに住むようになったこと…。何だか俺たちと共通点があるな。ということは、俺たちがガルー族と戦うことになったのも、ある意味必然というものか…)
 彼はしばらく机を離れられなかったが、読んでいた本を最終的に借りることにした。

 図書館を出てしばらく歩いていると、ブライアンはこげ茶色のスーツを着た賢そうな顔の中年の男とすれ違った。そのとき、この男は口角を上げてブライアンをチラっと見て、
「俺は知っている」
 とつぶやいた。不思議に思ったブライアンは立ち止まり、その男の姿をまじまじと見た。男も立ち止まって彼のほうを向き、
「おまえが何者かをな」
 と言い残すと、そのまま去っていった。ブライアンは彼の後ろ姿を見ながら、ぼそりと言った。
「何だあいつ」


 帰宅すると、フレディが既に家に居た。
「よぅ、おつかれ」
「ああ、ただいま」
 ブライアンが兄弟たちの間に座ると、話しだした。
「俺、変なやつに会ったんだよ」
「変なやつ?どんな?」
「こげ茶のスーツ着てて、擦れ違いざまに『俺は知っている。おまえが何者かをな』なんて言ってきた」
 彼の話を聞いて、フレディが身を乗り出すような体勢で言った。
「あ、俺もそいつに会ったんだけど」
「本当か!?」
「あぁ、擦れ違いざまに同じようなこと言ってきた」
 ロジャーが口をはさんできた。
「俺たちのしていることが、人に知られてるってことかよ!?」
 ブライアンは嫌そうな顔でうなずいた。
「何かヤだな、それ」
 ジョンもため息交じりに言った。G4の間で、しばし重い空気が漂った。
作品名:a Suspicious Man 作家名:藍城 舞美