a Suspicious Man
その翌日、午前10時を少し過ぎた頃、ソルシティにある5カ所の保育園で同時多発的に園児が殺害される事件が起こった。しかも、被害者はなぜか1カ所で7人ずつ、計35人の幼い命が奪われた。
園児たちが泣き叫び、保育士たちがパニックに陥る声を後ろに、こげ茶色のスーツを着たあの男が猛スピードで走っていた。この男は全身がこげ茶色の人狼の姿になり、舌を出して邪悪な笑顔で言った。
「ハンッ、俺タチハガルー、ダマシ討ちガ得意ナ部族ダ。SNSデノ予告ドオリニ動クワケガナイ」
そのとき、昼食の調達のためにスーパーへ行く途中だったブライアンがそのガルーに出くわした。彼はそれをひとにらみして、低いトーンで
「ガルー!!」
と言った。相手も余裕そうな顔で
「ホモ・サピエンスカ」
と言うと、ブライアンに向かって突進した。彼は右手を突き出し、手のひらから激流を繰り出したが、ガルーは拳を握って両腕をクロスさせて攻撃をガードした。
「えっ!?」
自身の攻撃が通じず、焦るブライアン。その隙に、ガルーは彼の胸を殴ってきた。
「!!」
ガルーのパンチをまともに受けて、ブライアンは地面に倒れ込んだ。彼が起き上がろうとすると、卑劣な人狼はその首を片手で締めるように押さえつけ、見下すような顔で言った。
「無駄ナ体力ノ消費ハ避ケタイ。ラストステージニ進ムタメニナ」
彼の言う「ラストステージ」とは、ガルーの族長であるライカンスロープとの戦いのことであり、もし現族長を倒せば、次の族長になれるのだ。
ガルーは手を乱暴に離すと、さっさとその場を後にした。敗北したショックと悔しさの交じった感情を胸に、ブライアンはガルーの後ろ姿を見つめた。
(何だあのガルー、今までのやつより妙に強い…)
グレイ家の次男は腕に付いた砂利を払うと、歯を食いしばりながら再び立った。
帰宅したブライアンから話を聞いたフレディ、ロジャー、ジョンは、落ち込む彼を見て、何も言えなかった。
しばらくすると、フレディのスマートフォンが鳴り出した。電話してきたのは、ドクター・フリックだった。
「やあ、フレディだ」
「ほえほえ〜、フレディだすな。実は今日、G4に渡すものがあるだす。みんなわしの研究所に来てほしいだす」
「研究所な。分かった」
フレディは電話を切ると、弟たちに伝えた。
「ドクター・フリックが俺たちに何か渡したいものがあるから、俺たち4人で研究所に来てほしいとのことだ」
「ドクター・フリックの発明品か。何だかいい予感がするような、やな予感がするような…」
「ガルーを倒せる武器とか作ったのかな」
「とにかく行ってみようよ、研究所に」
というわけで、G4はドクター・フリックの研究所へ出向いた。
作品名:a Suspicious Man 作家名:藍城 舞美